メジャー戦を見たりして思うこと

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かなり日記も久しぶりです。仕事がバタバタしてることと、帰宅後はゴルフの練習(特にパター)に熱中していて時間が取れないw。まあ、それはさておき、福田内閣改造とかあったんだけど、そんなのどうでもいい。支持率を上げたければ、減税以外にはありませんけどね。
で、今日もゴルフの話。
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2週間以上も前になりますが、全英オープンが行われました。ロイヤル・バークデールというのはすごいコースですな。たしか、五木寛之さんの「他力」という本で、「ここは河川敷か妙義山か」と書かれてたと思うのですが(河川敷がそんなにすごいところとまでは僕は思わないんですがねw)、まあ、その印象通りのすごいコースでした。
タイガー不在で盛り上がらない、なんて言われてた大会を盛り上げたのは、結果的に連覇を果たしたハリントンと、3日目までトップに立っていたグレッグ・ノーマン。今日はノーマンのことを少し。
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グレッグ・ノーマン。53歳。かつては、世界ランク1位に君臨した、最強のゴルファーですが、むしろメジャーでの悲運が目立っている選手です。確か、彼は4大メジャーすべてに、最終日トップでスタートして、負けたことがある唯一の選手だったと思います。しかも負け方が衝撃的過ぎる。全米プロでは、ボブ・ツエーがバンカーから直接放り込んで万事休す。マスターズでは、最終日トップを走りながら、「Jack is back!」の大声援に消えた1986年を筆頭に、プレーオフでラリー・マイズのミラクルチップにやられたり、6打差のダントツトップでスタートしながら、ファルドに逆転を許したり。結局、メジャーには全英の2勝のみなんですが、負け続けても、なぜか人気は高まるばかり。負けても毅然としていてカッコイイというのが、その一番の理由なんだろうと思います。
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そのノーマンが、シニアの年齢になって、若者集う全英OPで首位を走る。この年齢で全英OPに勝つとなると、全英OP黎明期に活躍した、ゴルフの父こと、トム・モリスあたりまで遡らなくてはならないのではないかと思います。日本国内の甘ちゃんコースと違って、全英OP開催のリンクスコースは、画面でもわかるように夏でも寒風吹きすさぶ凄まじいコース。もし、ノーマンが勝てば、今までのメジャーでの敗北を補って余りある栄誉になるに違いないところでした。
しかし、現実は甘くない。結局、ノーマンは序盤からスコアを崩し、優勝を逃してしまいました。またも、「勝てないノーマン」の再来となったわけですが、それでもまた彼は負けることでさらにカリスマ性を高めたようにも思います。
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このカリスマ・ノーマン、何がすごいかというと、やはりゴルフの精神を非常に重んじているプレーぶりだと、4日間観戦していて思いました。
特に3日目は風が強く、グリーン上でもボールがゆらゆら動くような状況でした。画面に映るほかの選手は、こういう状況でもあまり気にすることなく、パッとボールをマークしていたように思いますが、ノーマン、そして同伴者だったチェ・キョンジュはすごく慎重にプレーしていました。パットの際に気にする選手は多いのですが、マークする際にここまで慎重にプレーしていたのは、ノーマンとチェだけだったと思います。
また、それ以上に私が感嘆したのは、マークしたボールをリプレースするときのことです。
最近は、ボールに直線を引いて、それをラインに合わせる行為がまかり通っている。日本でも片山某とか横峯某なんかは、これでもか、というほど線を引いて、ラインにストロークしやすいようにしている。世界のトップレベルでも、タイガーだってやっているわけですが、私はこの行為が許せない。
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ゴルフのルールでは、人工物やキャディを目標の線上(前方も後方も)に置くことを禁止しています。じゃ、ボールはどうなんだ。確かに、他人のボールとを識別するために、ボールにサインを入れるのは、ゴルフのマナーです。これをしないアマチュアは多いですよね。私はいろいろ五月蝿いゴルファーなので、必ずラウンドにはマジックペンを携帯していて、同伴者のボールにサインがなければ、ペンをヌッと手渡して、
「サイン書いて下さい」
と言う。いや、いっぱい失くしますから、という人もいますが、むしろそういう人ほどサインが必要なはずですよね。ロストがどうかがわからないでしょ。だから、識別のためのサインはいる。しかし、そのサインを自分のプレーに有利なように使うのは、「人工物の利用」に近いんじゃないかと私は疑います。自分に有利に振舞わない、というのは、ゴルフの精神ですからね。
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しかし、ノーマンはボールをリプレースしたときに、何も印刷されていない面を上に置いていた。もともとノーマンの大ファンな私ですが、さらに私は彼のファンになってしまいました。
もちろんね、ノーマンは「サインやロゴが見えると、かえって構えにくい」という理由かも知れませんけどね。しかし、これなら有利に振舞っていることにはならない。そもそも、ゴルフはグリーン上でも、同伴競技者のボールと6インチ以上離れてないときは、ピックアップできなかったんですよ。だから、本質から言うと、ピックアップ自体、最小限にすべきだと思うのです。同伴競技者から「気になるからピックアップして」と要請されたときのみ、マーク&ピックアップが許されるべきです。まあ、そこまで原理主義に走る必要はないにしても、ピックアップした球をリプレースしたときに、自分のラインが取れるようにボールを置く行為は、ゴルファーの風上にも置けないと私は思うのですよ。
で、最近はタイガーも含め、ほとんどのプロがやっていて、そこには幻滅してたんです。しかし、ノーマンはそうしていなかったことに、未だゴルフの精神は死なず、と思って安堵した次第です。
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それに引き換え、日本のプロって何なのよ。
背中が痛いから欠場します、とか言っていた二人のプロが、次の北海道の試合には出場してるんですよ。はっきり言わせてもらいます。
 ゴ ル フ を 舐 め て る の か !
もうね、男子ツアーはなくなっていいと思う。存在する価値がない。こういう選手たちに対し、ツアーの上層部、スポンサー、ゴルフジャーナリズムから一切の批判が聞かれないっていうのは、どういうことなんでしょうかね。
本来、全英OPなんて這ってでも出たい大会じゃないのかと。コースが難しくて、天候が悪いから、こんなところでゴルフやって体壊すのもかなわんわ。そう思ってるんじゃないかとね。体調不良で休むなら(しかも風邪とかじゃないんだし)、タイガーみたいに1年休んでみろと言いたい。
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ま、先週の北海道の大会でも、強風下でドライバー振り回して82とか叩いたバカがいましたけどね。こんなプレーでも「勉強した」とか「吸収した」とか持て囃してる体質って、ジャンボ時代と何も変わってないんですよね、マスコミも。
まあ、夏坂健さん流に言わせてもらうと、
「プロゴルファーがいなくなったところで、週末の数時間が多少暇になるだけで、世界情勢が悪くなったりするわけではない」
んですよ。現在のゴルファーの9割方がしている、オーバーラッピンググリップの始祖である、1890〜1910年にかけて全英OP史上最多6勝を挙げた名手であるハリー・バードンは、雑誌の対談企画で次のような意味の言葉を残しています。
「早死にしたオレの兄貴は、1シリングの船賃がなかったために、対岸にある学校に通えなかった。今、オレたちプロの試合を見るだけのために、観客は10シリングの金を払い、オレたちは何10ポンドもの大金を賞金といってせしめていく。しかし、プロがきちんと身を律し、謙虚にならなくては、プロのゴルフは飽きられてしまうのではないかと危惧する」
バードンの言葉は、今にも十分通用していると思いますけどね。
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