一つの仮定を外してみれば

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アメリカが北朝鮮を事実上、容認するという格好になりました。拉致問題を抱える我が日本としては、実に苦しい立場に置かれたわけですが、残念ながら、アメリカにとっては日本の拉致問題は、流石に自国内の問題ではないわけですよね。そこを頼りにしないと成り立たない、日本の外交力はかなり悲しいところです。
今日は拉致問題をちょっと棚に上げて考えてみようと思っているので、この辺りで止めておきますが、外交の背景にはそれなりの軍事力が必要だな、と思うところです。
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さて、私も小中学校の間には、まだソ連という国があって、東西冷戦という時代の終わり頃を体験しています。大韓航空機撃墜事件は、たまたま自宅で速報ニュースを見ていました。いわゆる共産勢力というのは、なんと恐ろしいところだ、と思った経験があります。
その分、私の国際社会観もいわゆる「敵味方」はどっちだ、という考え方で見てしまうことが多いわけです。この問題で言うと、北朝鮮は当然、敵国ですから、北朝鮮と「親密」に交際している(ように見える)シナ共産党政府は敵。で、テロ国家指定を解除するまでのアメリカは、白馬の騎士であるように見てきたわけです。
が、本当にそうなんだろうか、と思うのです。
ここでの私の意見は、「週刊アカシックレコード」の分析によるところが大きいです。
「中朝山岳国境〜シリーズ「中朝開戦」(13)」
http://www.akashic-record.com/y2008/ckmbdr.html#02
冷戦終了後、アメリカは世界を支配する唯一の巨大勢力となりました。今、ロシアは復権に躍起になっているわけですが、今のところ、かつてのソ連ほどではない。それに較べると、そもそも巨大なマンパワー、すなわち人口を持つシナ共産党政府、いわゆる中国大陸とインドがアメリカにとって、かなりややこしい存在なのではないかと思うわけです。
例えば、ロシアは宗教的、人種的に通じます。が、ことアジア、しかも日本のように「西洋化」されていない国は、やはり彼らにとっては扱いにくい。また、人口が多いということは、それだけ巨大な市場ということであるわけで、経済力を持って旧共産勢力を駆逐したアメリカにとって見れば、ここを「支配」することの価値は大きい。ただ、このご時世で、「支配」というのは評判が悪いので、政治的な統治は現地政府が行い、経済的には自分たちが支配するというのが一番いいやり口だと言えます。
今のところ、インドはこういうアメリカ式のルールに従順に映っている。しかし、シナ共産党政府は、そもそもが資本主義体制を否定することを建前にした政府です。しかも、独裁国家であり、自前で持つ軍事力を自国民に向けることにためらいのない政府です。こういう国は、アメリカから見ると「信用できない」国になるのだと思います。今は、表面上、アメリカ式のルール、いわゆるグローバルスタンダードに、不完全ながらも乗っかるようにはしていますが、いつその手を返すか、わからない。アメリカにとっては、かつてこういう経験を中東や中南米で何度もしてきている。つまり、アメリカという国ほど、世界各国で年から年中、ケンカばかりやってる国もないし、またそこからケンカの「作法」のノウハウを大量に持ち合わせている国もないんです。
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そのアメリカが今回、北朝鮮をテロ指定国家から排除したとはどういうことか。
そもそも、我々は北朝鮮とシナ共産党政府は仲がいい、ということを前提に考えています。しかし、よく考えると、朝鮮民族とシナ共産党政府の根幹を形成する漢民族とは民族が違うわけですし、歴史的に見ると仲が良いわけがないんですね。だって、歴代のシナ大陸にできた大きな王朝は、朝鮮半島を「犬扱い」でしょ。で、その王朝は、しばしば朝鮮半島の付け根にあった国家の軍事力によって滅ぼされたりしてる。そこが、今、蜜月になってるように感じてしまうのは、多分、第二次世界大戦の敗北による「罪悪観(感じゃなくて)」から来ている部分もあるんじゃないでしょうかね。
で、北朝鮮がそもそも核開発をするきっかけになったのは何か、と言えば、近隣の大国に侮られないためでしょ。悪だとか言う前に、彼ら視点で見れば、そうならざるを得ない。近隣に、シナ、ロシア、日本や韓国を媒体にしたアメリカ。あんな小さい国が、3ヶ国からはさまれ、睨まれる位置にあるわけでしょ。で、何か近隣諸国に手渡せる「お土産」でもあれば、話は別ですが(例えば、日本なら経済力であったり、工業力だったりする)、どういう物産にも恵まれず、かといって、地域安保上、すごく重要な位置にいて、かつ他勢力に併呑されずに済まそうと思ったら、相手を威嚇するに足る軍事的手段を持つ以外に方策がなかったわけですね。
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アメリカとしては、五輪を機会に世界的に大きくなる可能性のあるシナ共産党政府は放置したくない。これは、欧米人としてはナチスの例がある。五輪のとき、五輪が平和の祭典という言葉を鵜呑みにしたら、ナチスは増長し、結果、国家存亡の危機に立たされました。だから、何とかシナを牽制しておきたい。かといって、五輪中にシナ共産党政府を武力で露骨に吊るし上げたくもない。これは、ただでさえ、国際世論(政府の見解とは違ってることが多い)で評判の悪いアメリカの評判を落としかねない。同じように、シナ人の爆発的な勢力拡大を懸念しているのは、ロシアだったりします。中ロ国境は長大な上、ロシアにとって、そこは人口の超稀薄地帯。シナ大陸は平和になると、人口が膨大し、辺境へ入り込むというのは、シナ大陸史に繰り返し起こってきていることですから、ロシアもシナには頭が痛い。
そこで、白羽の矢が立ったのが、北朝鮮ということです。
北朝鮮をそれとなく支援してやる。実はそれだけで、シナ共産党政府には牽制球になるわけです。シナ共産党政府は、一つの王朝だと思っていいのですが、歴代王朝の支配が終わるきっかけの多くが、東北地方、つまり現在の北朝鮮の辺りに住み着いた勢力の侵入であるからです。
今、シナ共産党政府が支配している地域は、ほぼ清王朝の最大版図と一致します。その清は、それ自体、実は今の北朝鮮界隈に居住していた半農半牧民族だったわけです。それが人口比で100倍以上の漢民族を支配したわけでしょ。そのただでさえ「強い」北朝鮮アメリカやロシアが暗黙に肩入れするという事実は、シナ共産党政府にどれほどの圧力がかかっているか。
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で、ここで想像が付くのは、シナは思ったほど金メダルを稼げない。特に、判定種目では有利にならないだろうということです。もともと、シナに持っていかれても構わないもの、例えば卓球とかバドミントンとか、飛び込みだとか、体操だとか、そういうものは、シナが表彰台独占ということにもなるでしょうけど、その他、欧米諸国が必死になってやっている(つまり欧米諸国にとってカネになる種目)では、抑え込まれてしまうのではないかと思います。もし、これでもシナにあからさまに有利な状況が起きたら、下手すればドンパチものかも、ね。
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こういうシナリオも考えられるということです。拉致問題も大きな問題ですが、残念ながら、今の国際政治のパワーゲームの中では、埋もれてしまいかねない問題だということなんですが、上記の「アカシックレコード」によると、安倍→福田への首相交代も、この一件が背景にあるとのこと。いや、本当にそこまでなのか、福田首相の我々から見ると、異様なほどの親中派ぶりを見ると、それはちょっと信じがたいようにも思うのですけれどね。
何がどうあれ、我々としては拉致問題の完全なる解決を望んでいるのですが・・・。
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