読売、迷走中?

朝日の「自白」社説が話題になっているようですが、それへのツッコミは他の方にお任せします。それより、本日紹介したいのは、読売のコラム「地球を読む」。今週は、元・駐タイ大使の岡崎久彦氏の文章による「『靖国』と中国の戦略」です。全文紹介したいのですが、結構長いので、私が要点と思うところを抜き出してご紹介します。基本的に、岡崎氏の本コラムは、昨日の読売の社説を一刀両断する内容です。
まず、今、シナの気持ちをもっと理解するべきだ、という意見・評論をたくさん見掛けますが、その情勢に対して、岡崎氏は次のように分析します。

情勢判断には常に楽観的シナリオと悲観的シナリオがあり、えてして平時には楽観的シナリオが優先する。それは悲観的シナリオはしばしば相手国にとって不信感を表明することになるので非礼となるからである。
しかし長期的戦略立案者の至上命令国益であり、国民の安全と繁栄である。楽観論をとって国民の安全と繁栄を床なっては何にもならない。どうすれば年ごとに増大する中国の国力と圧力に対抗して国民の安全と繁栄を守ったらよいのかに集中して考えてみたい。ただ紙面が限られているので、長期的な政治安全保障戦略について論じるのは次の機会として、今回は靖国関連の問題を論じたい。

シナの言い分を聞こうじゃないか、という人の多くは、シナの日本への注文は靖国だけと思っていることでしょう。これが楽観的シナリオですね。ところが、岡崎氏はその楽観的シナリオの危うさを説きます。

中国側の戦略戦術から見て、それ(注:首相の靖国参拝中止の実現)は日中間の境にある靖国という堅城一個抜いたということである。それは、その戦略の有効性が証明されたということであり、当然次の目標にそれが再び使われることになる。

靖国は、日本の政界・財界に圧力をかけ、思うように日本を誘導する、というシナの戦略のいわば、テストケースになっているというわけです。で、靖国で成功したシナは、同じようなことをやってくるでしょう。それについて、岡崎氏は次のように述べています。

すぐ次に控えているのが何かはわからないが、最後に必ず台湾問題に来る。
中国の国益からいって、靖国などは小さな問題である。日本のビジネスからいっても靖国などは何ら痛痒を感じない問題である。しかし台湾問題はそうは行かない。
台湾併合の中国の戦略はいくつも考えられよう。その一つは、アメリカと日本が、政治経済的に台湾を見捨てることである。アメリカは無理でも日本だけでも相当な意味がある。また日本だけ差別することも可能である。外国新聞社の支局設置に際して、日本だけが中国と台湾の二者択一を迫られたのは古い話ではない。一度改善したからそれが続く保証などどこにもない。むしろかつて日本側が言うことをきき、政府もまったく抗議しなかったという先例が残っているだけである。

そう。文革当時の「朝日以外」追放事件で、シナは日本マスコミをコントロールする自信を持っているのです。政府だけでなく、マスコミも猛省すべきです。無論、マスコミの辞書には「反省」という字句が入っているとは思えませんが。ともかく、台湾を併合することが、まずはシナの目標であることは確かでしょう。これを、民主社会の住人である我々は、断固拒否しなければならないはずです。民主社会に暮らす2200万人の人々が、新たに非民主独裁国家に組み入れられることは、言論の左右を問わず民主主義社会を肯定する人であれば、それに異議を唱えなければならないはずです。だから、台湾問題に対する日本の姿勢は、明らかなはずなんですが。
そして、最後にこのように結んでおられます。

靖国問題で譲ってはいけない。後々の日本人の安全と繁栄に禍根をのこす。とくに、その見返りが実質がない一時の無風状態−首脳会談の再開なども含めて−だけしかない場合は絶対避けるべきである。
もし譲るならば、たとえば、中国の教科書の中の事実無根な反日記述は全部削除するなどの具体的かつ永続的な措置が条件でなければならない。具体的な代償が必要となると、中国も戦略を変えねばならない。
そういうことならば、靖国の英霊の許しも得られようが、それ以外は絶対にいけない。

全くその通りですね。昨日の社説子に、しっかり読んで欲しいと思います。