人権擁護法案をよく読んでみた

ずいぶん前の日記にコメントが寄せられていたので、リンク先ではなく、人権擁護法案自体をよく読んでみることにしました。
で、私の一番の疑問を最初に書いておきますね。
基本的に法律やルールというのは、各個人の人権を守るために存在しているものであるはずで、人権擁護法案と名乗る法律の存在は、非常に不思議です。
法案は法務省のHPにあるこちらを読みました。
http://www.moj.go.jp/HOUAN/JINKENYOUGO/refer02.html
疑問点その1。

第 二条 この法律において「人権侵害」とは、不当な差別、虐待その他の人権を侵害する行為をいう。

で、この具体的な例は、第三条に書いてあると考えていいのかな?

第 三条 何人も、他人に対し、次に掲げる行為その他の人権侵害をしてはならない。
(以下略)

曖昧ですなあ。まず法律に「その他」「等」って書くなよ(人権擁護法案に限らず)。「人種等」って何? 具体的に法律で禁じる項目をきちんと書けって。人種以外に何があるの? 解釈の余地がないように、きちんと書いて欲しい。人種の他にあるとすれば、性、出身地などがあるんじゃないかね。これこれこれはダメ、と書いておくべきだと思いますが。
で、もっと本質的な部分を挙げることにしましょう。

第二章 人権委員会
(略)
第三章 人権擁護委員
(略)

この後、長々と人権委員会人権擁護委員会についての説明書きが続いてますが、私の一番の疑問は、何で「人権委員会」という新しい組織が必要なのか?ということなんです。人権擁護法に賛成する立場のお説の内容はわからんでもない。人権擁護法の趣旨自体も、まあ良いとしてだ、何で人権委員会が必要なわけ? 民法とか刑法には、民法委員会とか刑法委員会とかありませんやんか。人権擁護法も他の法律と同列に扱えば良いんじゃないですかね。被害を受けた人が、警察に被害届を出す。それを警察が捜査し、必要であれば裁判所に逮捕状を請求し、従来法と同じように裁判所で司法判断をする。それで良いんじゃないですか?
私は、これが思想統制言論弾圧に繋がる可能性を孕んでいるとは思いますが、あえてそれを理由には致しますまい。人権委員会は、何かいろんな機能・権能(調査、救済、仲裁、調停、勧告など)を有してるようですが、何で行政府の一機構である法務省の、そのまた管轄下にある一委員会が、そんな強力な権能を保持する必要があるんですか? 人権委員会なんか、別になくたって、人権擁護法案は十分に機能するんじゃないんですか? また人権擁護委員会の委員には、給与が支払われないんでしょ? つまりボランティアなんですよね。有閑者でかつ富裕者でないと、人権擁護委員には事実上、なれないってことは、人権擁護委員になるための条件として「人種等」を理由に差別してることにはならないんでしょうか? いや、人権擁護委員はそんなに忙しくない、というなら、なおさら人権委員会だの人権擁護委員会だの必要ありませんでしょう。人権侵害犯罪担当の警察官、法務官僚を増員すればよいではありませんか。この点については、法務省の「人権擁護法案に関するQ&A」
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken83.html
には書いてありませんしね。人権擁護法案の法律的な意図は、わからんでもないです。曖昧すぎるんで、もっときちんと「何がダメ」なのかはハッキリさせて欲しいんですが。でも、何で人権委員会人権擁護委員会なるものが必要になるのか、その理由がよくわかりません。引っかかるのは、人権擁護委員は無給としながらも、

第 二十六条 2  人権擁護委員は,政令で定めるところにより、予算の範囲内で、職務を行うために要する費用の弁償を受けることができる。

としているところかと。人権擁護委員の職務が

第 二十八条 人権擁護委員の職務は、次のとおりとする。
  一  人権尊重の理念を普及させ、及びそれに関する理解を深めるための啓発活動を行うこと。
  二  民間における人権擁護運動の推進に努めること。
  三  人権に関する相談に応ずること。
  四  人権侵害に関する情報を収集し、人権委員会に報告すること。
  五  第三十九条及び第四十一条の定めるところにより、人権侵害に関する調査及び人権侵害による被害の救済又は予防を図るための活動を行うこと。
  六  その他人権の擁護に努めること。

のように定義されていますんでねぇ。やっぱり「人権擁護法案」利権が発生しそうですね。特に人権擁護には当然プライバシーの保護が入っているので、例えば、人権擁護委員が実施した人権侵害に関する調査についても、その費用請求については、具体的にどういうところにどういう調査を行ったのかが、果たして予算審議で明らかになるかというと、はなはだ如何わしいと、私は感じます。つまり、ここが利権の発生点になると、私は考えている次第です。
Googleで「人権委員会の必要性」をキーワードに検索しても、引っかかるのはわずか13件。人権問題の窓口一本化程度の理由では、どうも腑に落ちません。こうして見てみると、やっぱり新しい利権誘導の一環なんじゃない?と思うので、そういう意味でも反対。
というわけで、私からの反対理由。

  1. 人権委員会人権擁護委員会の必要性が理解できない。
  2. 新しい「人権擁護法案」利権の発生が危惧される。

以上です。