脱原発は現実的か?

私は非現実的だと思う。ヨーロッパでは脱原発が進んでいる、日本もよろしく脱原発とすべきだ、という論がありますが、これは脱原発を進めているヨーロッパ各国と日本の産業構造の違いを理解せず、非現実的理想論を述べているだけ。
ドイツは産炭国です。石炭業界の政治的発言権も大きい。これはアメリカにおける石油業界の発言権が大きいことに類似してます。つまり、石炭産業保護のために発電エネルギーを原子力から石炭へ移行する、ということです。もちろん、CO2の排出量は増えますが、石炭業界以外の業界が排出量を抑制する、という方針を持っている。またスウェーデン脱原発を進めています。スウェーデンは産炭国ではありませんが、人口が少なく、国内に巨大な製造業もなく、また夏場の電力消費量が小さいという事情から、過剰な発電設備となる原子力は、スウェーデンのような小さい国にとっては逆に負担である、ということです。それぞれの国の事情から判断してるだけのこと。
その点で言うと、日本は基本的に製造業立国です。工業製品を世界に売って稼いでいる。人口も多い。夏場も暑い。安価で安定に供給される電力がどうしても必要な国です。かといって、国内に石油も出ないし、石炭も出ない。安価でエネルギー効率の高い石油を使うと、石油を中東から購入しなくちゃならない。しかし、中東は政情不安定なので、石油価格が安定しない。できれば、政情の安定した国から、十分なエネルギー源を輸入したいが、石油ではそれは無理。そこで、出てくるのが原子力です。ウランの産出国は、石油ほど偏りがありません。日本と友好的な関係があり、かつ政情の安定しているオーストラリア、カナダ、アメリカなどで産出します。こうした国から、エネルギー資源を輸入できるメリットは、非常に大きいのです。つまり、原子力発電を推進していけば、万が一中東からの石油輸入が一切ストップする状況が発生しても、電力供給はストップしない、ということが可能となります。これはエネルギー政策として間違っていないと私は思う。しかも、原子力燃料は、1回使ってももう一度再利用できるという利点もあります。再利用の効かない化石燃料と違う大きな利点です。
すでに原子力発電は、40年近く稼動してきた、どちらかと言えば、老練の域となりつつある技術です。しかし、老練の驕りで基本的な部分をおざなりにしてきたのが今回の事故です。ここまで有効に使ってきた技術を捨ててしまうのも非現実的。老練の技術をしっかり生かすためにも、その基盤となる安全管理を徹底するのが、一番現実的な方法です。
それにしても、脱原発反核反戦憲法9条護持。どちらも非現実的理想論で、そのどちらも標榜しているのが朝日新聞ってところが面白い。
それから、今朝テレビを見ていると「検査や安全管理をする部門が、関電社内ではなく下請けに出している。これが安全管理の意思伝達を阻んできた元凶だ」と息巻いているアホな評論家がおりました。なら、三菱自動車の事件はどう説明するの? 社内であっても意思伝達ができるとは限らないってことでしょ。評論家なら場当たり的なこと言ってんじゃないよ。