具体的な解決策を示さないのは論説と言えるのか

朝日社説「■プロ野球スト――打開の道を探れ」
http://www.asahi.com/paper/editorial20040908.html
今回の社説こそ大衆迎合の最たる例で、かつ具体策がまるで提示されてない社説の典型例ではないでしょうか。
「6月中旬に唐突に公表されたオリックス近鉄の合併合意に端を発した混迷は、行き着くところまで来た。野球観戦を楽しみにしてきたファンから見放されたくないのなら、球団、選手双方は打開に向けて、率直に話し合うほかない。」
出た、朝日の「話し合い絶対主義」。話し合えば何でも解決できると考えてるのかね。プロ野球界は政治とは違うので、民主主義的な解決策をする必要はないんだけれども。
「まず、オリックス近鉄の合併を1年間凍結し、合併の是非や労働条件を話し合う。さらに、新たに参入する球団の加盟料や参加料を見直す。不透明な金がかさみ、球団経営を圧迫してきたドラフト制度を抜本的に改革する。(段落)要は、性急な合併に走らずに、時間をかけてプロ野球を良くする道を話し合いましょう、ということだろう。」
問題を1年先送りする、ということだけが具体的な提案で、あとはすべて抽象論。抜本的に、とは言うが、どういう方法を取るつもりなのか、一つも見えてこない。これから話し合おうと言ったところで、具体的な案がないのに話し合いも何もあったもんじゃない。時間をかけている間に、近鉄は経営がどんどん悪化するわけですが、それは放っておけってことですか。選手会が合併凍結を申し立てるなら、近鉄球団の救済のために、全選手の年俸の10%を拠出し、近鉄の選手への報酬の足しにする、などというような提案くらいしても良さそうなものだが。だから私は「まっとうな要求」ではないと考えている。
「「近鉄を買ってもいい。それが無理なら、新しい球団を作る」。そう申し出たIT企業もあったのに、相手にもしなかった。」
ライブドアのことですね。確かにライブドアの言い分を全く聞かなかったのは、オーナー側の失策だとは思う。ただ、近鉄の現状を考えると、経営がライブドアに変わっただけで、劇的に経営が改善するとも思えない。本拠地は大阪のままにするわけだし(新規のファンが増える可能性が少ない)、選手の質がいきなり高くなるわけでもない。なら、FAやトレードによる補強が解決策になるかも知れないけど、大リーグでは出来星のオーナーが短期的に高額の報酬で選手を買い漁り、ワールドシリーズに優勝すると、翌年に選手を一気に売り払って、チームが低迷する、という事態が起きた。しかも、2回も。マーリンズダイヤモンドバックスのことですが。挙句に、チーム売却まで進んだケースもあるし、ライブドアの提案からは、その危険性を孕んでいるように思う。せめて、ライブドアが「近鉄をウチが買い取る。ただし、大阪を離れる」と言ってくれれば、私も諸手を上げて支持するんだけど。
「打開の道を探る最後の機会だ。オーナーらは、今度の合併が本当にプロ野球の再生につながるのか、これまでの経緯にとらわれず、立ち止まって考えるべきだろう。」
「また、最終決定権を持つ根来泰周コミッショナーは、労使双方を呼んで直接その主張を聴いたうえ、スト回避のための仲介に乗り出す考えはないのだろうか。すでに個別の球団の経営問題などではない。プロ野球全体の将来にかかわるものとなっている。」
「必要と判断したなら、経営側に合併の先延ばしなどの譲歩を求める指令を出してもいいだろう。」
「日本野球の底力を見せることで人気挽回(ばんかい)に一役買うはずだったアテネ五輪では、豪州チームに連敗してしまった。このうえ、釈然としない内向きの球界再編劇を見せられたら、ファンの心はますますプロ野球から離れてしまう。」
結局、朝日からの提案は「話し合え」「問題は先送りしろ」の2点に集約されます。はっきり言えば、具体的な提案は何もないのですね。こんなの論説には値しないと思うのだけれど。