「安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書に関する社説

読売と朝日を読んでみました。内容は詳述するとして、両紙でこの「安全保障と防衛力に関する懇談会」の略称が違うのですよ。読売は「安保懇」、朝日は「防衛懇」。読売は、この懇談会を「安全保障」という観点で捕らえているのに対し、朝日は「防衛力」という観点で捉えていると考えていいのかな。まあ名前の呼び方などどうでもよろしい。
まずはタイトル。
読売 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20041004ig90.htm「新たな防衛力構築にどう生かす」
朝日http://www.asahi.com/paper/editorial20041005.html「期待はずれだった」
朝日の社説のタイトルを見た人は「そうか、期待はずれだったのか」と、この後、先を読むことなく素通りしそうな気がします。というよりも、中身を読まないで欲しいがためのタイトルなのか、とも思ってしまいます。これは私がひねくれているからでしょうか?
次に防衛力の効率化について。
読売「具体的には、戦車、火砲、護衛艦、航空機などを縮減・効率化する一方、機動力、輸送力などを向上させるべきだとしている。新たな脅威や任務に即応する装備体系に転換するのは時代の要請だ。」
朝日「冷戦期にできた「基盤的防衛力」という考え方を見直す。戦車のような旧来型の兵器を削減する。「すべての兵器を国産で」は割高だから、やめる。そんなふうに、防衛力を時代にあった効率的なものにすることはいい。」
読売は従来主張の繰り返して、特に見るべき点はありません。ただ、朝日が「防衛力を時代にあった効率的なものにすることはいい」と言うのはいかがなものか。平和憲法遵守を掲げるからには、戦力不保持が原則のはず。なるほど、朝日の愛読者に見られたくない記述です。
さて、両者の論点が著しく異なったのは、武器輸出三原則。
読売「現状は、日米共同技術研究の一部を除き、事実上、全面禁輸となっている。ミサイル防衛の共同研究の進展を踏まえ、少なくとも同盟国の米国への武器禁輸を緩和すべきだとの主張はもっともだ。」
朝日「気掛かりは、武器輸出3原則の緩和をはっきり打ち出したことである。兵器の共同開発が主要国で広がりつつあり、このままでは日本だけが取り残される。ミサイルの脅威に対抗するミサイル防衛を実用化するためにも3原則は障害になる。報告書はそんな理由を挙げた。」
国産兵器のコストが高い原因は、国内にしか売り先がないことも一因になっています。朝日は一段落前で、国産は高いので海外から買うとするのは悪くない、と述べていながら、国産兵器自体のコストを下げることには反対。この辺り、矛盾しています。もしかして安い兵器の買い付け先は中国や北の国をお考えなのかも。
集団的自衛権や日米同盟に対する考え方は、お互い従来の主張を繰り返しただけで特筆すべき点はありません。ただ、朝日が総力を挙げた「年金未納者狩りキャンペーン」の最初の被害者になった福田・元官房長官を懐かしむような以下の記述
「2年前に、首相に外交政策を助言するための「対外関係タスクフォース」をつくったのも福田氏だ。米国の単独行動主義を懸念し、「日本は米国と同じ目的を持ちつつも自らの座標軸をもつべきだ」と提言して話題になった。 それなのに、懇談会の報告書は結局、防衛官僚の作文と同じになってしまった。福田氏の官房長官辞任が影響したのだろうか。」
これも一種の「ブーメラン効果」と思っていいんでしょうかね。自衛隊の存在を丸々認めたり、自民党の実力者を持ち上げるような内容を書いてしまったので、朝日の愛読者にとりあえず中身を読まれないようにとタイトルを付けて逃げてみた、というところでしょうか。