理系思考の欠片もない連中

昨日、読売の記事を結果的に持ち上げることになってしまった日記を書いて若干後悔。今日付けの社説では、理系知識皆無のいかにも「マスゴミ」の典型的な作文でありました。
マスコミいわく「地震発生で手動で制動後、2kmも滑走した」なんてことが書いてありますが、自分で書いておいて理解できないのが朝日新聞
「新幹線脱線、安全性に死角 P・S波同時で検知できず」
http://news.goo.ne.jp/news/asahi/shakai/20041025/K0024201911123.html
「時速270キロで走る列車が完全停止するまでの時間(約1分半)や制動距離(約4キロ)が大きく変わるほどの効果は期待できない。」
自分で、270km/hで軌道上を走行時にフルブレーキをかけても、4kmの制動距離が出る、と書いているわけですよ。ブレーキの性能によるところもあるでしょうけど、とりあえずざっくり計算してみます。ブレーキとは運動エネルギーを減衰することになるわけですが、その運動エネルギーは質量×速度の二乗、つまり制動距離は運動エネルギーに比例すると考えていい。ということは、200km/hで走っていた14両編成の上越新幹線の制動距離は16両編成の東海道山陽新幹線に比べて、速度条件から見て約55%(200/270の二乗=0.548)に減り、さらに重さの違いで48%(0.548×14/16=0.48)にまで減ることになります。すなわち、4×0.48=1.92kmが制動距離ということになります。つまり「軌道から外れたのにほぼ性能通りの制動距離で、転倒することなく停止した」ということです。これをもって「安全対策が足りなかった」と言うのは果たして正しいのでしょうかね。改めて新幹線の技術力の高さを証明したとしか、私には思えない。
ブレーキ始動から2kmも、なんて言って、地震が起きたら1mたりとも動いてはならない、ようなことを主張していますが、もう一つ、根本的な問題をマスコミは忘れています。クルマで急ブレーキをかけたとき、自分はどうなるか。シートベルトをしていなければ、たかだか40km/h程度で走っていても、フロントガラスに一直線です。ましてや、200km/hで走る新幹線です。しかも乗客はシートベルトをしていない。もし、仮に制動距離が500mそこそこだとすると、乗客にかかる力は単純計算してその4倍。まあ、吹っ飛ぶでしょうね。列車が止まったのはいい。新幹線というハードは壊れなかったけど、車内は血の海、なんてことになりかねないのです。これだと、安全神話って何やねん、ということになるんですが、マスコミはそのことをわかってるのかと。わかってないんでしょう。
私は今回、新幹線には橋脚等も含めて震災対策としては満点を差し上げたい。橋脚は破損しているけど、阪神大震災のときの阪神高速のように倒壊した箇所は一つもないしね。日本は地震の起きる場所で暮らしている。だから「ここまでは現状でできる対策だ」というところを何らかの理由をもって立てるしかない。その理由は、予算によるところも多い。耐震構造にすることは当たり前の話ですが、コストがかかる。コストはそのまま税金や利用料金に跳ね返る。そのバランスをどこで取るか、ということです。その辺のバランスを論じないまま「安全神話崩壊」と叫ぶなんぞ、無責任も甚だしい。
そんなことでJRの揚げ足を取り、鉄道技術者を愚弄する連中は、今日もヘリコプターで被災地上空に騒音を撒き散らし、疲弊した被災者にマイクを向ける。ましてや女性なんぞ、この状況で化粧することすらままならぬ、その顔を全国に流す。何の権利あってそんな横暴が許されるのか。取材のついでに、社内で集めた救援物資でも持っていったのか? たとえそれが自分たちが取材した場所だけだったとしても、それは役に立つはず。こんなときだけ「公平を欠く」とか抜かしやがるんだろうけどね。
政府・自治体・自衛隊ほか、多くの組織は阪神大震災を教訓に行動できている。しかし、マスコミは全く成長していない。そのことは、インタネットの住人たちはしっかり見抜いているぞ。