大御所に楯突くようで申し訳ないのですが

西村幸祐さんの「酔夢ing voice」はほぼ毎日読ませて頂いております。日々、勉強になると思いつつ読んでおりまして、大筋で西村氏の主張には賛同いたしております。ただ、2/12付「日本は、6カ国協議から離脱せよ。」には、多少異論があります。
http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=401628&log=20050212
さるさる日記にはトラックバックが打てないので、勝手に引用させていただきます)

北朝鮮6カ国協議への「無期限中断」宣言は、瀬戸際外交の真骨頂を見せている。小泉首相は相変わらずの調子で「粘り強く」「対話と圧力」という言葉を呪文のように繰り返している。そろそろ「圧力と対話」と順番を変えればいい。ただ、一つの変化は制裁の条件に言及した事だ。「日本が絶対的に優位な場合に戦争になってもいい位の覚悟が必要だ」と述べている。ここで一つの疑問が湧く。小泉首相はこれまで北朝鮮に対して「戦争になってもいい位の覚悟が必要だ」と思っていなかったという事だ。拉致被害者の奪還と全容解明にそれ位の覚悟が無くてどう対処して来た?この言葉でこの3年間の小泉政権の対北外交の実態が明らかにされた。拉致というテロが戦争に等しいものという認識すら持てない人には即刻辞めてもらうしかないだろう。

太字は引用者ですが、この太字の部分の解釈について、私は西村氏と異なる見解を持ちます。というよりも、西村氏の解釈の仕方である「小泉首相はこれまで北朝鮮に対して「戦争になってもいい位の覚悟が必要だ」と思っていなかったという事だ」とは、私は読めないのです。
これは、西村氏までが読売新聞の印象操作に騙されているんじゃないかと。西村氏が引用している記事は、こちらですね。
「北への経済制裁、首相「日本が絶対的に優位な場合に」」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050212i301.htm

小泉首相が10日夜、視察先の札幌市で、地元選出の自民党国会議員らと会食した際、北朝鮮への経済制裁について、悩ましい胸の内を吐露していたことが明らかになった。
出席者によると、首相は北朝鮮拉致問題などへの対応に強い憤りを見せた。そのうえで、「制裁の効果があるのは、日本が絶対的に優位な場合に限られる」と語った。一方で、「やる場合、戦争になってもいいぐらいの覚悟が必要だ」「国際協調の枠組みでやるしかない」などと述べたという。

西村氏は「悩ましい胸の内を吐露」を鵜呑みにしているのかなと。これを前提にしてしまうと、続きの首相の発言は、すべて自分に言い聞かせているように受け取れるんですが、よく考えるとおかしいと思いませんか? いわば自分の部下に当たる自党の議員に対しての発言でしょ? つまり、この議員たちに言ってるわけですよ。議員に「覚悟が必要だ」と言っていることは、普通に考えると、そのように自分たちの支援者に伝えてくれ、ということですよね。
経済制裁を行うためには、その制裁が確実に効果を発揮できる状況まで持って来なければならない。そして、確実に効果がある経済制裁というのは、北朝鮮の体制を揺るがしかねないものであるから、北朝鮮が戦争という手段に訴えてくるだろう。その覚悟を国民の皆さんが持って頂かないと、対北朝鮮問題を解決することはできないんですよ、と私はこの記事からそう読み取りました。
確かに経済制裁をすべし、という議論が盛んになっていますが、その先にどういう危機があるのかをわかっているのかと。憲法に軍隊不保持が明記されていたり、非常事態に対する規定がなかったりする法的な不備を改める議論をしなければならないはずです。確かに西村氏の言うように、啖呵を切って交渉の席を立つというのは理想だと思いますが、しかし今の国内の法体系を見たとき、戦争になったときに対処できるのか、と言えば、私はまず無理だと思うのです。確かに武力としての自衛隊はある。力量も十分でしょう。しかし、自衛隊憲法に記載がない令外官扱いです。現時点で自衛隊が行動しようと思えば、何かにつけて「超法規的措置」が必要になるでしょう。しかし、それでは日本は法治国家とは言えないと私は思うんです。
小泉首相の真意は私もよくわかりません。しかし、首相の発言から我々はどういう対処を考えるべきかというと、闇雲に小泉退陣を叫ぶよりも、首相が誰であろうと、緊急事態に対処できるような法体系と行政機構を準備することではないのかと思います。