平和ボケの典型的な社説

マラッカ海峡でまたまた海賊事件が発生しました。朝日の社説が、平和ボケの典型的なパターンに陥っているのでツッコミを入れたいと思います。
「海賊――「大動脈」を安全な海に」
http://www.asahi.com/paper/editorial20050316.html

民間の船は無防備で海賊に対抗するすべを持たない。今回の賊はロケット砲まで備え、銃撃してきたという。

日本では、明らかに非合法の武装集団に対しても「武装勢力」「民兵」とか言ってますが、事実上日本でいう暴力団と同じです。非合法で取り締まるべきものです。この海賊は、すでに軍事力を持っていますね。何故、このようなことが起きているかのか。普通に想像すれば、このマラッカ海域の治安維持がなされていない。すなわち、海峡に適切な軍事力が置かれていないということです。
日本で言えば、戦国時代における瀬戸内海だと思っていただければいいのです。瀬戸内海は海賊の巣窟でした。島が多く、また両岸が近く、海賊の補給地が多い。そして、中央政府や地方政府が弱く、海域を武力で取り締まることが出来なかったのです。秀吉、家康と中央政権によって取り締まりを厳しくした結果、瀬戸内海は安全な航路となり、江戸時代の経済を支える大動脈となったわけです。
ということは、マラッカ海峡に必要なものは何か。
それは海賊よりも強い武力を持った海上治安維持部隊です。それがあれば、海賊はなくなります。ですから、アメリカは朝日が言うようにこのように進言したことがあります。

業を煮やした米国は昨年、テロ対策も兼ねて、海賊対策に軍事力を投入する地域海洋安全構想を打ち出した。

マラッカ海峡諸国は、アメリカの提案に積極的ではなかった。朝日は理由を次のように述べています。

だが、マレーシアやインドネシアは「外国軍の大規模な展開は逆効果だ」とこれを拒否した。米国に同調する動きは広がらなかった。
イスラム教徒の多い地域である。イラク戦争を続けている米国がここで海賊退治に乗り出しても、摩擦が生じるだけでうまくはいくまい。
それよりは、沿岸諸国が効果的な海賊対策を進められるように後押ししていく方が現実的だ。

ここが朝日の現実逃避体質です。現実逃避体質を隠蔽するために反米を使っているのです。マレーシア、インドネシアの「外国軍の大規模な展開は逆効果だ」は、よく考えると理由になっていないのです。外国軍が大規模展開すると、かえって海賊が増える、と言っているのですよ。そんなおかしな話はありますまい。ただ単に、メンツの問題なのです。自国の領海すらまともに警備できない国です、なんてことは、東南アジアの盟主を自認するマレーシアやインドネシアとしては言えるはずがないのです。イスラム教徒が多かろうが、海賊のない海域になって、安全な航路を確保する方が、マレーシアやインドネシアにとっても経済的に良いはず(寄港地ビジネスが栄えるから)。ですから、結局は国のメンツでしかない。しかし、マレーシアにしろ、インドネシアにしろ、彼らの軍隊は実は国内治安向けの軍隊なんです。ですから、当然のことながら海軍力が弱い。だから海賊に太刀打ちできないのです。

年末のインド洋大津波は、海賊にも大打撃を与えたといわれる。実際、しばらくは犯行が途絶えた。
ここにきて出没し始めたのは、海賊も立ち直りつつあるからだろう。彼らに復活の足掛かりを与えてはならない。

やはり騒動の渦中にあるせいか、この社説子はライバル(?)のNHKニュースをご覧にならなかったようです。昨日のNHKニュースでは、マレーシア海軍の司令官がインタビューで、
津波被害復興がピークだった頃は、この海域に各国の海軍の艦艇が多数存在していた。復興支援が一段落して、そういう艦艇が引き上げた。その結果、海賊がまた暴れ始めた」
という意味のことを言っていました。簡単なことです。貧困だか何だか知らないが、とにかく海賊の取締りに必要なのは、海賊以上の武力を持つ治安維持部隊による取締りしかありません。マレーシアやインドネシアが金銭的に海賊対策費用がない、というのであれば、それ相応の援助は必要でしょう。また、軍事的に海賊退治の実力がない、ということであれば、国連のような国際的機関によってマラッカ海峡治安維持軍を置く必要ががあろうかと思います。
朝日の言うように

海上警備のノウハウを積み重ねてきた日本が協力できることは多い。途上国援助の予算を活用し、必要とされる資材や専門家をさらに送り込むなど、できるだけの支援をしたい。

では、対処できないレベルに来ているということです。相手はロケット砲で武装してるわけですからね。すでに相手は「軍事力保持」のレベル。朝日の言う「できるだけの支援」の中には「自衛隊派遣」はもちろん入ってないんでしょうな。