産経「正論」に唸る

出張時のお楽しみと言えば、産経新聞です。特に産経新聞は「正論」が素晴らしいのです。昨日の「正論」も非常に素晴らしいものでした。WEB版には月曜分しか掲載されないのがニクイです。本当は全文ご紹介したいのですが、要点部分(と私が解釈した部分)をかいつまんでご紹介します。
「いかがわしくも愛おしい民主主義」
慶応大学教授 阿川尚之(7/27付 産経新聞朝刊 オピニオン面)

(略:sanhao_82注:この記述の前に、アメリカの連邦高裁判事指名に関することが書かれている)
オコナー判事が引退を表明してから四日後の七月五日、日本の衆議院では郵政民営化関連六法案が、わずか五票差で可決された。国中がこのニュース漬けになっていたから、これ以上書き加えることはない。筆者は郵政民営化に賛成だが、細かい議論はわからない。しかし法案採決のニュースを見て、実に素晴らしいと思った。
賛成票を投じた議員にも反対票を投じた議員にも、さまざまな思惑があったのだと思うけれど、多数決による決定を無視する人、あるいは無効だと主張する人は一人もいなかった(sanhao_82注:ただ一人、民主党ジャスコ岡田代表だけは、事実上の内閣不信任であると表明し、無効であると暗に主張していましたが)。郵政法案をめぐって殺された人も皆無である。みんな参議院の採決を固唾を飲んで見守っている。
郵政民営化法案可決から二日後の七月七日、今度はロンドンの地下鉄とバスで同時多発テロが起こった。事件の全容は明らかになっていないが、狂信的なイスラム教徒による犯行という説が強い。自らの信仰に基づき、意見の異なるものを無差別に殺す。こうした過激なテロリストたちは、多数決の正当性など微塵も信じていないだろう。
三つの出来事には、まったく関連がない。しかし、最初の二つ(sanhao_82注:アメリカにおける宗教保守派と進歩派の対立について、多数決で決定したことが一つ目。二つ目が郵政民営化法案の採決)は、自らの正しさを確信した以上なかなか譲るのが難しい宗教や伝統・慣習といった問題についてでさえ殺し合いを行わなくなった人々の話であり、最後の一つは、まだまだその段階に達していない人々が世界にいることを改めて想起させる事件である。
民主主義や立憲主義は、その理想が高邁であっても、実際の運用は時に相当いかがわしい制度である。しかし、無差別テロを目の当たりにすると、そのいかがわしさが何とも愛おしい。いかがわしさに耐えねばならないと思う。そのような感想を抱いた一連の出来事であった。

慶応には良い先生がおられますなぁ。これこそ言論を業とする人の文章です。私もこのような文章が書けるようになりたいと思います。
日本のブログ界には、意見の異なるものを無差別に「殺し」はしないけど、無差別に「削除」する人たちはおられるようですけどね。そういう方たちは、阿川先生のこの文章を読んで、少しは感ずるところはあるんでしょうか。
(そういう方たちは産経を読まない、ということをちと忘れてました)