アメリカの災害行政の実態

アメリカ南部を襲ったカトリーヌの被害は、街自体の壊滅にならないかと思うほどです。インフラの崩壊はともかくとして、略奪・暴行が横行する状況を見ると、アメリカもなかなか大変な国だと思わざるを得ません。私は阪神大震災の被災者ですが、阪神大震災当時、人のいない商店からモノを略奪するような集団には遭遇しませんでした。その体験を重ねてみると、不謹慎ながらも日本に生まれたことに感謝せざるを得ません。
さて、アメリカにはこうした災害やテロなどに対応する機関として、FEMA(連邦緊急事態管理局)というものがあることは有名です。しかし、今回の被害報道を見ると、あまり前面に出てきていないような印象がありました。これについて「泥酔論説委員の日経の読み方」さんが興味深い考察をされておりますので、ご紹介いたします。
「ハリケーンカトリーナ」 被害拡大は「人災」の声」
http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=329372&log=20050905

FEMAと言えば、災害時のエキスパートのように日本のマスコミでは喧伝されており、岡田代表率いる民主党も同じような行政組織を日本に作るべきだと主張しています。
一方、小泉政権FEMAのような組織は行政のスリム化を目指す日本において屋上屋を架すような話だとして取りあってません。
実際のところ、ブッシュ大統領から権限委譲されているFEMA責任者に対し、なぜもっと早く市民を避難させなかったのかとテレビのインタビューで詰問された際、いや市当局がそうしなかったのは残念であると、なにか他人事のように答えていたことからも分かるとおり、防災にしろ避難にしろ治安にしろ一義的な権限は市や州にあり、連邦政府レベルでも国土安全省や国防省が実権を握っているのです。
FEMAとは、そう言った自治体、省庁間のコーディネーションをする役所であって、行政の中の行政をやっているセクションだと理解してよいでしょう。
今回は予防から事後までFEMAが機能不全を起しており、これはどうも役所の縄張り争いと言う官僚組織の最も悪い面が出てしまったのだと思います。
米国の「緊急事態対応」とは、詰まるところ膨大な役所間の調整作業なわけで、FEMAが災害現場に飛び込んで行けば全て解決するというのは日本のマスコミが作り上げたフィクションなんですね。

これは慧眼だと思いました。