戦争を避けるには

「首相「A級戦犯には責任」」
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20050904AT1E0400T04092005.html

小泉純一郎首相は4日のテレビ朝日番組で、中国などとの先の戦争を正義の戦いとする見方があることについて「避けなければならなかった戦争だった。A級戦犯は戦犯として裁判を受けた」と述べ、極東国際軍事裁判東京裁判)で有罪とされたA級戦犯には戦争責任があるとの認識を重ねて示した。自身の靖国参拝に関しては「私が参拝するのは特定の人ではなく、心ならずも亡くなった人たちに対してだ」と強調した。

さて、小泉首相は「戦犯として裁判を受けた」と述べています。これを受けて、記者は「戦犯には戦争責任がある」と解釈したというわけですね。どうも一足飛びな印象は否めませんが、小泉内閣の公的な発言から見ると(特に細田官房長官)、記者がこういう記事を書いても仕方ない部分もあろうと思います。ですが、国会議員ともあろう人やあるいは国会議員に靖国問題だの戦争責任などを問う評論家は、やはり国会の議事録は、せめて要約でもいいから、読んでいた方がいいと思います。昭和28年8月3日の衆議院本会議で「戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議」が、全会一致で採択されていますね。この議決によって、日本国内には東京裁判戦争犯罪者とされた方々が赦免・釈放され、恩給が与えられることになっているんですね。つまり、今の日本に「戦犯」などいない、ということです。
それにしても「正義の戦いとする見方」ってのが蔓延してるのか、という点がまず疑問ですね。今までは、1930〜45年の日本を「悪の権化」として見てきたわけですが、それに疑問を持つ人々が増えた、ということは事実だろうと思います。しかし、それを「正義の戦い」と見ている人はどれだけいるのかどうか。戦争というのは、後で振り返ってみれば、どれもかしこも避けるべきものです。それまでの政策・外交が失敗したから、最終的に戦争に踏み込まざるを得なかったわけで、反省すべきは、戦争に至るまでの政策・外交方針の検証であり、そして実際の戦争における軍の運用についてでしょう。そういう総括はきちんとやっておくべきではないかと。
例えば、当時の日本については、次のような見方をしている人がいます。

You must understand that Japan had an enormous population of nearly 80 million people, crowded in 4 islands. It was about half a farm population. The other half was engaged in industry.
Potentially the labor in Japan, both in quantity and quality, is as good as anything that I have ever known. Some place down the line they have discovered what you might call the dignity of labor, that men are happier when they are working and constructing than they are idling.
This enormous capacity for work meant that they had to have something to work on. They built the factories, they had the labor, but they didn't have the basic materials.
There is practically nothing indigenous to Japan except the silkworm. They lack wool, they lack petroleum, they lack tin, they lack rubber, they lack a great many other things, all of which was in the Asiatic basin.
They feared that if those supplies were cut off, there would be 10 to 12 million people unoccupied in Japan. Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security.
(太字部分のみ訳:もしこれらの原料の供給を断ち切られたら、一千万から一千二百万の失業者が発生するであろうことを彼らは恐れていました。したがって彼らが戦争に飛び込んでいった動機は、大部分が安全保障(自衛)の必要に迫られてのことだったのです。)

すごく日本に贔屓な見方をしていますね。これは、ダグラス・マッカーサーアメリカ議会上院軍事外交合同委員会で証言した内容の一部です。日本と死力を尽くして戦った相手の大将が、このように証言しているということも、私たちは知っておいた方がいいと思います。
(上記マッカーサー証言およびその訳は、中条高徳・渡部昇一共著「子々孫々に語りつぎたい日本の歴史」(致知出版社)によります)