事実上、日米に優勢と見る

「米国務次官補「北朝鮮は正しい決断」・6カ国協議共同声明」
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=STXKB0323%2019092005&g=MH&d=20050919

6カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補は19日、共同声明採択後に会見し「偉大な日だ。北朝鮮は(完全核放棄の確約という)大きな決断、正しい決断を行った」と述べた。次回の第五回協議では査察・検証体制の確立に重点を置き、保有する核兵器や核施設をリストアップして、情報を積極開示するよう北朝鮮に呼び掛けた。

この6カ国協議というのは、名目上「北の核問題解決」ということになっていますが、実際には「朝鮮半島におけるパワーバランス構築」のための協議です。露シと日米が朝鮮半島における影響力を競っているわけです。日米および露シから見れば、北も南も朝鮮は一緒くたです。北と南を一緒くたに見ている時点で、拉致問題が議題に上るわけがないんですね。なのに、マスコミはそれを期待した報道をしているわけですね。
で、今回の交渉は北朝鮮やシナ共産党政府の思惑に乗せられた、拉致問題の言及がなかった、と批判することは少々筋が違っているように思います。というのは、何がともあれ北朝鮮は「核放棄」を確約したわけですね。つまり、これから先、核放棄の方向と異なる姿勢を見せれば、即約束違反、ということになるわけです。いや、約束を反故にするのは北の得意技ではないか。しかし、この約束が「米朝間」のものではなく、安保理常任理事国でもあるロシアとシナ共産党政府も含めた「6カ国間」の約束になっているところがポイントです。
もし、北朝鮮が約束を履行すれば、朝鮮半島は非核化できるわけで、これはこれで「6カ国協議」の名目が果たされたことになります。これはこれで望ましいことです。また、北朝鮮が約束を反故にして、核開発をしたらどうなるか。
アメリカは、国連安保理に付託すると思います。このとき、ロシアもシナ共産党政府も拒否権を発動できる立場ではなくなった、ということが、今回の「6カ国間」の合意の意味だと私は思います。ロシアもシナ共産党政府も約束を反故にされた、という立場がアメリカと同じになるからですね。つまり、経済制裁にしろ、軍事的展開にしろ、国連のお墨付きは確実に得られる状況をアメリカは作り出した、ということでもあります。
この結果は、引いては日本にとっても追い風になります。日本は直接的な軍事力行使のできない立場ですし、経済制裁するにしても、単独の立場では有効な策は取れません。しかし、国連のお墨付きが出ることによって、抜け穴になりがちの露・シ・南鮮という穴を封じ込めることができます。さらには、日本国内においても経済制裁(特に在日北朝鮮籍人の資産凍結、経済活動禁止)の「大義」ができます。その点で、多少迂遠な方法ではあれ、北朝鮮経済制裁を効果的に実施するための環境が整いつつあると見ていいと思います。
その点では、日米の交渉担当者はよく粘った、と言うべきではないかと思う次第です。
日本が急いでやるべき次の課題は、憲法改正および有事法制の整備です。国連安保理のお墨付きの出た経済制裁は、効果が大きいと予想できます。首が右にも左にも回らなくなった金正日が、「近隣敵国」である日本にミサイルを撃ち込んでくるなど、軍事行動に出てくる可能性は大いにあります。そうした事態に対応できるようにしておくことも、経済制裁の効果をより高めるものになりますから。