宗教的な背景

靖国問題でもわかるように、日本人は相当宗教音痴です。イスラエルの行動が、実は宗教的な背景があることは理解できていないように思います。
レバノン南部空爆、子供ら57人死亡 数千人が国連施設包囲」
http://www.sankei.co.jp/news/060730/kok093.htm

イスラエル軍は30日、レバノン南部の村カナ空爆。中東の衛星テレビ、アルジャジーラによると、子供37人を含む民間人ら57人が死亡した。レバノン政府は同日、即時停戦を要求、予定されていたライス米国務長官との協議を拒否した。長官は29日にイスラエル入りし、事態打開のための中東訪問を再開したばかりだったが、仲介外交は中断を余儀なくされた。

太字にした「カナ」という村がキーワードです。このカナ、実はカナンという名前の方が有名だと思います。旧約聖書にある「ヨシュア記」には、次のような意味の行があるそうです。

ヨシュアはこのマケダ前の陣営で五王を処刑したのち、マケダの町も滅ぼしました。さらに五王の根拠地を攻撃して留守居の部隊もろとも全住民を滅ぼしていき、カナン南部の[全域を征服し、その王たちを一人も残さず、息ある者をことごとく滅ぼし尽くした。]と記録されています。
http://www.nunochu.com/bible/06_joshua/jos10.html

つまり、イスラエル人(ユダヤ人)にとっては、カナンの地に住む「異教徒」を駆逐、全滅することは「正義」なのです。ヒズボラの根拠地である、というのも事実でしょう。ヒズボラ旧約聖書を知った上でカナンで活動していると見ていいと思います。
そういう宗教的な背景を考えると、この問題は一筋縄でいかないのです。
前にも書きましたが、信長がいたからこそ、日本人は「政教分離」を「常識」として受け入れることができるようになったんです。しかし、世界のほとんどの国では、はっきり言えば政教分離はできていないんです。だから、マスコミがイスラエルを批判するのは、正直、何の効果もない。イスラエル人にしてみれば、世界中の「非ユダヤ」のマスコミが何を言っても、それは「異教徒」の寝言だと解釈されるだけなんです。また、ヨーロッパ社会(米も含め)では、これまでの、ユダヤ人を迫害してきた歴史があるわけで(その最終的な典型がナチスであって、もともと欧州キリスト教徒にはユダヤ人への差別意識はあった。詳しくは、シェークスピアの「ベニスの商人」をお読み下さい)、その負い目もあって、イスラエルの行動を厳しく非難できない側面もあるのです。ユダヤ系がアメリカ経済やジャーナリズムを牛耳っているという側面もありますけどね。
正直なところ、私にはこの問題の根本的な解決策は思い付きません。信長の政策を拡大すれば、国連が「国連軍」という強大な軍事力を持つことによって、イスラエルヒズボラ双方の行動を軍事的に抑え込むくらいしかないのではないかと思います。