勘違いしてる人々

社会

昨日、養老孟司先生の靖国問題に関するコメントを引用させていただきました。TBを送って下さった方々（そういや、オジサマは私からのTBは不快じゃないのかな？）、ありがとうございます。
まず、天皇の中立性について、ですが、例えば明治天皇よりも前の天皇については、そのご親筆にせよ何にせよ、現代において公開されて何の不都合がありましょうか。それがすでに現代においては何の政治的な意味を持たないわけですからね。また、当時は天皇のご意向は、政治的に重要な意味があったのだから、別段問題はありません。しかし、現行の日本国憲法下では、それは認められないことになっていますでしょ。昭和帝のご意向がすでに政治的な意味を持たない、と判断して日経の記者が報道したのなら話は別ですが、明らかに政治的な影響を及ぼすだろうとして、報道した。ということは、日経の記者さんは私の見解では、明らかに憲法違反ですね。
天皇陛下を政治的に利用しない、というのは、実は明治期、いや幕末からその思想自体はあったのです。明治帝の前の天皇に孝明天皇という方がおられました。この方は、佐幕派だったそうですが、あの新選組を配下にしていた当時の京都の治安維持担当役であった会津藩の藩主に、「私は会津藩のみを頼りにしている」という意味のご親筆を下された。その後の歴史の展開を考えると、会津藩はこのご親筆を公開することで、自らの政治的な立場を逆転することが可能であったはずです。しかし、当時の会津藩主・松平容保はそれをせず、かつ身内にすら見せなかった。また、その存在を知った身内も、それが政治的な意味を持たなくなってからそれを公開した。日経記者とか富田氏のご家族は、先に司馬遼太郎氏の「王城の護衛者」を読んでおいて欲しかった。天皇の中立性というのは、そういうものなんですよ。日本国憲法は最初に天皇について書かれていますが、これは天皇陛下および皇族の方々に対して「守れ」と書いているのではないのですよ。もちろん、天皇陛下や皇族の方々が露骨に政治介入するようなことがあれば、国民はそれを無視しろ、という条文であると同時に、国民が天皇陛下や皇族の方々を政治的に利用しちゃダメだと言ってるんですよ。
靖国問題に関して言えば、養老先生の言うとおりで、本来、政治的な問題じゃないはずです。政治的な問題にしてはならない、ということが憲法20条に書かれている。しかし、日本のマスコミや政治家はよほど不勉強らしく、憲法に書かれていることを理解できていない。それが結果として政治問題としての「靖国問題」になっている。小泉首相が「心の問題」というのは、正しいけど少し言葉が足りなくて、憲法20条に書いてあるとおりです、と言えばいい。また、福田氏が総裁選出馬から降りたのが、この「メモ報道」に起因するとすれば、私は福田氏を護憲派と認めます。
別に谷垣氏が靖国参拝しません、と言うのもこれはこれで勝手です。今のところ、谷垣氏は他人に対し靖国参拝をするな、とは言っていない。だから、それはそれでいい。ただね、谷垣さんに聞きたいことは、アナタは首相になったら自衛隊の最高司令官になるんですよってことです。つまり、東条英機さんと同じ立場になるんだということです。で、不幸にも谷垣さんが首相在任中に戦争が起こるかも知れない。そして、その戦争に負けてしまい、戦勝国から（今のフセイン元大統領のように）弾劾裁判をされるかも知れない。そして、平和を乱した罪とやらで死刑になり、以後、日本国民からも罵られ続ける立場になるかも知れないんですよ。その覚悟があって、靖国神社が「A級戦犯」を祀っていることを批判しておられるんですかね。私が首相なら絶対に戦争はしませんから。そんなことを言うヤツは、私は信用しませんよ。むしろ、「A級戦犯」を靖国神社が祀っているのは、せめてもの慰めだと私は思うのですがね。
（あまり知られていないことですが、8.15に開催される全国戦没者追悼式典で追悼される方々には「A級戦犯」とされる方々も含まれています。ってことは、靖国神社の「A級戦犯」合祀反対派は、いずれ戦没者追悼式典からも彼らを除外するんでしょうかね）
で、最後に「靖国神社は軍人以外の、例えば空襲などで亡くなった人を祀っていないからケシカラン」という意見。一見、正論のような気がしますが、それに対しては次のように答えたらよろしいと思います。
「それならば、そう思う有志の方々で浄財を募り、戦争で亡くなった全ての方々を追悼する新しい宗教を作ったらいかがでしょうか」
靖国神社は「国の盾となった人を、その成功・失敗を問わず、神様として祀る」という宗教団体だとざっくり私は理解し、その信者になっています。その靖国神社の「コンセプト」が気に入らないのなら、信者にならなければよいし、自分の宗教的なコンセプトに自信があるのなら、そのコンセプトを提唱した宗教団体を作ればよい。その自由を日本国憲法では保障しているんですよ。
「戦争で亡くなった人」の定義を意図的に勘違いして噛み付いたってショウガナイ。靖国神社定義に納得できないのであれば、自らの定義に従った新しい宗教団体を作ることを私はオススメいたします。