インテリとインテリジェンス

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件の嘘吐きジジイに付き纏われている今日この頃である。しかし、いいこともある。考えるネタに困っているときに、ふと、重要なネタを提示してくれることもあるからである。
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まず、一つは言葉の問題である。私は、件の嘘吐きジジイのことを、つい最近までは件の「オジサマ」と呼んでいた。ところが、彼によると「オジサマ」とは「叔父様」とか「伯父様」のことなので、親族ではない彼に、私がそう呼ぶのは正しくない、と主張した。、「おじさん」ではないのか、という。このロジックを誰かに説明して欲しいところである。ちなみに、私には都合3名の伯父がいるが、いずれも私が彼らに話しかけるときに使う言葉は「おじさん」である。しかし、私の国語の採点官が嘘吐きジジイだったら、どうやら×を付けられそうである。そして、「オジサマ」とはuncleであるが、「おじさん」はfatherなのだそうである。世の中には、随分、変わった辞書があるものである。拙宅には、学生時代から世話になっているリーダーズ英和辞典(研究社)があるので、fatherの項目を引いてみたが、「父、父祖、祖先、父として仰がれる者」と書かれている。また、Fatherと大文字で始めると尊称として「・・・翁、老」や「創始者」とある。どうも、リーダーズにはfatherの意の中に「おじさん」という意味はなさそうである。
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さらに、私に対し、インテリジェンスが足りない、とも申された。実は、これは正鵠を得ている。実は、私には確かにインテリジェンスが足りない。しかし、インテリジェンスを持つ人=一般的な意味でのインテリ(あるいはインテリゲンチャ)ではない。
実際、日本人にはインテリジェンスの意味が分かっていないのではないか、と指摘した人がいる。私の知る限りでは、司馬遼太郎氏がその筆頭であろう。今、父に貸しており手元にないため、正確な引用はできないが、司馬氏は日露戦争当時と、第二次大戦時のの軍・政府関係者を比較して、前者はインテリジェンスを求めることを重視したが、後者はそれを怠った、と指摘していたと記憶している。
同じくリーダーズからインテリジェンスの英語に相当するintelligenceを引いてみる。すると、日本語で一般に言い習わされている「思考力、理解力、知能」の他に「報道、情報、諜報」という意味が載っている。あまり知らない人はいないと思うが、アメリカの有名な諜報機関である中央情報局・CIAは、central intelligence agencyという。情報ではあるが、informationではない。
司馬氏は、著作の中で、世の中にはinformationは溢れている。その中から、本当に必要なモノがintelligenceであり、また、本当に重要なものを見極める力がintelligenceである、という意味のことを述べている。ということは、俗に言うインテリの元になった、インテリゲンチャ(これはロシア語だそうで)は、一般的には知識階層や知識人、という意味で使われているが、本当に意味するところは、intelligenceを見極める力を持った人である、ということであろう。
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養老孟司氏は、著作の中でピーター・バラカン氏と対談した際、日本人にとって「知識」とは「雑学」のことではないですか、と指摘され、正にその通りだ、と思った、という意味のことを書いている。つまり、これは暗に「日本人はintelligenceがない」と言っているようなもので、私は身につまされる思いがした。intelligenceという書き方をすると、どことなく政治経済軍事の香りが強いが、よくよく考えると、理科系の人間が実験結果からある結論を見出す課程も、実はintelligenceであるということである。理系の方ならよく理解頂けると思うし、特に物理・化学・生物などの実験系の科学をやったことのある人なら分かるが、実験をやると、一体何が何だか訳の分からない結果が出てくる。この時点では、実験結果はinformationの段階である。この中から、本当に必要なものを抽出することがintelligenceであり、得られたモノもintelligenceということになる。もちろん雑学的な素養、すなわち教養も必要だが、教養を持つだけでは、決してインテリでも何でもないということである。無論、今の日本語では「教養人」という意味でしか使われていないように思えるが。
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以上が、私が考えた「インテリ」(あるいはインテリゲンチャ)の定義である。「常に改革の精神なくして成り立たない」ものではないと、私は考える。ちなみに「インテリ 改革の精神なくして成り立たない」とgoogle検索で入力すると、
http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&rls=GGIC,GGIC:2006-52,GGIC:ja&q=%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%86%e3%83%aa%e3%80%80%e6%94%b9%e9%9d%a9%e3%81%ae%e7%b2%be%e7%a5%9e%e3%81%aa%e3%81%8f%e3%81%97%e3%81%a6%e6%88%90%e3%82%8a%e7%ab%8b%e3%81%9f%e3%81%aa%e3%81%84
となる。最初の2件は拙日記である。これはこれで結構笑えますねw。
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