社説比較してみました

まず、読売。
[原潜領海侵犯]「領域警備の態勢を強化せよ」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20041110ig90.htm
「問題なのは、今回の海上警備行動の発令に当たっての日本側の対応だ。  政府は、一九九六年暮れ、領海内を潜航する国籍不明の潜水艦に迅速に対応するため、閣議決定を経ずに、首相の判断で海上警備行動が発令できるよう、手続きを簡略化していた。  だが、今回の発令は、潜水艦が領海内を約二時間も潜航して、領海外に出た後だった。海上自衛隊は、九日未明から潜水艦を追尾していたにもかかわらず、なぜ侵犯直前に発令できなかったのか。  情報の伝達や分析、判断など、政府内の連携に問題があったのではないか。 外国海軍の艦船が日本の領海を侵犯した場合、領域警備任務に当たる自衛隊が適切に対応するための態勢を一層強化する必要がある。」(段落部分は引用者が空白に変更。以下同じ)
政府御用聞き新聞の評価高い読売にしては、珍しい政府批判。しかし、2時間という時間は「中国と事を荒立てない」という時間稼ぎであり、その後に海上警備行動発令で体裁は繕ったのではないか、とストレートに書かないところはやはり政府御用聞き新聞たる所以でしょうか。ただ、内容には十分理があると思います。
で、産経行ってみましょう。
「■【主張】海上警備行動 国の意思を一応は示した」
http://www.sankei.co.jp/news/041111/morning/editoria.htm
「国籍不明の潜水艦が、沖縄県先島諸島周辺の日本領海に不法侵入し、海上警備行動海上自衛隊に発令された。自衛隊の出動も躊躇(ちゅうちょ)しないという国家の意思を相手国に一応示したといえる。」
あくまで「一応」というところでしょうか。それにしても、いつもの産経らしくない、と思ってましたが、後半にはしっかりと書いておりまして、
沖縄本島から約五百キロにわたる先島諸島は、宮古島の空自のレーダーサイト以外に自衛隊は配置されていない。防衛の空白地域であることも相手側に見透かされているのではないか。 中国などが海軍力を強化している現状を考えれば、昨年末に閣議決定された海自の護衛艦、哨戒機などの縮小計画は机上のプランにしか過ぎないことがわかろう。」
きちんとした防衛力を整備しろ、という常の産経の思想をしっかり述べております。産経と読売、表現の違いこそあれ、日本国として毅然とした対応を取れ、という点では共通しています。
で、昨日、ちょっとした予測をした朝日の社説。
「■中国潜水艦?――解明急ぎ、緊張を避けよ」
http://www.asahi.com/paper/editorial20041111.html
おいおい、読売も産経もタイトルに「中国」を書いてないのに、朝日は「?」付きとは言え中国って書いちゃったよ。怒られるぞ〜、北京政府から。で、社説の初めから70%くらいまで「論説」じゃなくて「記事」の部分なんです。朝日の考え方はとにかく出てきません。で、最後の最後に
「中国政府に事件の早急な調査を望みたい。問題を長びかせてはならない。」
こんだけ。う〜ん、私の予想は外れた。残念。しかし、これって潜水艦は中国だって朝日だけはわかってるってことかな? 読売も産経も念頭には中国を置いているけれども、北京政府に対して何か行動を促してはいません。政府も今のところ「国籍は調査中」としているのだから、中国に対して文句を言える時期ではないし、そもそも日本の新聞社なのだから、北京にどうこうしろということではなくて、日本政府に対してどうすべきかを論じればいい、という立場を読売や産経は取っているんでしょう(それが当然だと思いますが、私は)。しかし、朝日は「明確に」中国が事件の当事者であると断定。きっと北京政府、怒るよ〜。大丈夫か、朝日。まあ、実はこの一文前にちゃっかり
「月末に開かれるアジア太平洋経済協力会議の場で準備が進む小泉首相胡錦涛国家主席の会談も、首相の靖国参拝問題がネックになって開催はなお微妙だ。」
と書いて北京政府のご機嫌は取ってるんですけどね。