自衛官も国民だがね

「陸幕の憲法改正案問題で防衛次官「事実関係を調査」」(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20041206ia21.htm
「屋武昌防衛次官は6日の記者会見で、陸上幕僚監部の幹部自衛官憲法改正草案を中谷元・元防衛長官に提出していた問題で、「内容を把握して防衛庁の見解を出す」と述べ、改正案の作成の経緯など事実関係の調査を続ける考えを示した。  中谷氏は同日の党憲法改正案起草委員会で、「個人的に意見を聞いただけだ。案は起草委員会にも提出していない」と述べた。」
私には、なぜこれが「問題」になるのかが理解できない。読売の記事でも、なぜ問題になっているのかについては書かれていない。
同じ記事を朝日から拾ってみる。
陸自幹部が改憲案 自民起草委の中谷委員長が依頼」(朝日)
http://www.asahi.com/politics/update/1205/005.html
防衛庁は、幹部の行動が自衛隊法61条に定めた「政治的行為の制限」などへの抵触や、防衛庁設置法23条に定めた「幕僚監部の所掌事務」の逸脱にあたらないか調査を始めた。」
ほう。私は、自衛隊法61条の政治的行為の制限とは、自衛隊に所属したままで立法府の議員になるとか、地方の首長になるとか、あるいは国務大臣になることに相当すると思っていた。自衛隊が組織的に憲法改正案をまとめたところで、そのまま案が通るような仕組みには日本はなっていないはず。
「この文書は、陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛班所属の幹部が作成。中谷氏によれば、今年夏ごろ、この幹部と憲法改正の意見交換をし、その結果を条文にするよう求めた。文書は7月末に渡されたが、11月に自民党憲法調査会がまとめた憲法改正草案大綱の素案には「全く反映していない」という。とはいえ、憲法に関する意見を制服組に求めた中谷氏の姿勢も問われそうだ。」
なぜ、制服組に憲法に関する意見を聞いてはいけないのだろうか。現憲法には、戦力不保持が書かれているのに、戦力を有する自衛隊が存在する、という矛盾を抱えている。つまり、令外官扱いの自衛隊員を憲法上に明記する、という考えを持つ中谷氏が、それについて自衛隊員の意見を聞くことは、むしろ妥当な行為であると私には思えるが。
防衛庁幹部は5日、「陸幕内での個人的な文書か組織的関与があるのか調べている。仮に個人的であっても、政治的行為への関与を禁じた自衛隊法などの観点から、こうした文書を自民党側に示すのは適切でない」と述べた。」
はい、この防衛庁幹部って誰なんでしょうか? 朝日得意の「伝聞形」です。恐らく朝日の脳内防衛庁幹部ではないかと。
ちなみに、産経はこの「問題」、WEBでは記事にすらなっていません。
で、読売、朝日、産経の三社で一番正しいのはどれか。
それは産経です。何故かというと、産経は自衛官も国民である、ということを認識できているから。自衛官も国民なのだから、憲法改正案を組織として提案すること自体、何の後ろめたいこともないのです。特に自衛隊令外官扱いで、立場が不安定なので、自衛隊員の立場から「自衛隊憲法に明記して欲しい」と要望することができるはずです。ところが、読売は自社で改憲案を提示して、改憲論を引っ張っている一大勢力になっている。そのくせ、自衛官憲法改正案を出すと「問題」として扱う。これは「読売新聞の記者が改憲を語る自由はあるが、自衛官にはない」と言っているに等しい。さらにひどいのは朝日で、朝日は自衛隊法61条「政治的行為の制限」を根拠に、自衛隊員が政治的なことを考えることすら許さぬ、と言っている。しかし、条文をよく読んでみましょう。
(政治的行為の制限)第61条 隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない。
2 隊員は、公選による公職の候補者となることができない。
3 隊員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。
政治的な問題を自衛隊員が考えることを禁止する条文にはなっていませんね。朝日の主張する「政治的行為」に「憲法改正案を考えること」が含まれるなら、最終的には選挙で投票行為を行うことすらできないことになるし、ましてや憲法改正案が国民投票にかけられたとき、政治的行為に相当する、という理由で国民投票に加われないことになります。つまり、朝日の主張するところは、自衛隊員には隊員以外の国民と同等の権利を認めない、ということです。要するに、自衛隊員に対する差別をしろ、と主張しているわけです。日本を代表する知的な新聞、一枚剥げば差別思想の塊というわけですな。