ついに社説にまで書いてやがった

昨日、どういうわけか朝日の社説を読むところまで頭が回らなかったんです。今朝になって読んでみると、昨日、拙日記で述べた「自衛官による憲法試案」を問題視した社説を書いてやがるんですね。
「■陸自幹部案――とんでもない勘違い」
http://www.asahi.com/paper/editorial20041207.html
昨日、申し上げたように、自衛官も国民です。国民が憲法改正案を作ることは何ら問題ないはず。それが自衛官ならなぜいけないのか、明確な理由はないでしょう。例えば、自民党にも文教族と言われる族議員がおりますが、文科省の役人さんが憲法改正案を作り、それを文教族の親玉である森前首相の私的勉強会で示していたとしたら、朝日は問題視するでしょうか。あるいは、法律の専門家である裁判官が憲法改正案を作り、それを公表したとしたら朝日は問題視するでしょうか。
しない。絶対にしない。
自衛官文科省の役人も裁判官も、みな公務員です。公務員ですから、政治的行為に関与してはいけないわけで、自衛隊法61条と似た規定を、いずれの公務員も受けています。役人身分のまま、立法府の議員になれないでしょう。裁判官の身分のままでも同じです。三権分立の原則を維持するために、三権の兼職を認めない、ということです。自衛官は、国防という行政サービスを提供する役人さんですから、当然、他の三権の役職に就くことは認められない。ただそれだけのことが自衛隊法61条に書かれているにすぎません。
他の公務員に認められることを、自衛官にだけは認めない。これは差別です。他に合理的な理由がない。まず、朝日はそのことについて、全く認識がないか、あるいは知っていて自衛官を差別しているのか。どちらにしても、自衛官を法律的な立場として、他の公務員よりも低い位置に置こうとしている。これを差別思想と言わずして、何と言うのでしょう。
では、文中から多少引用を。
自衛隊を軍隊にし、専守防衛の枠組みを取り払い、非常事態宣言ができるようにし、軍法会議をつくり、国民の権利も必要に応じて制限することをうたう。要は、そういうことである。」
禍々しく書いていますが、非常事態宣言や戒厳令に関する憲法上の規定がない国も、日本くらいなものです。国家の柱である三権が真っ当に機能しない状況(戦争や首都災害など)を想定していないのが日本国憲法です。全く能天気と言わざるを得ない。また、それでよいとする朝日の姿勢は、さらに問題。朝日はアナーキストですか?
憲法9条をまるごと否定するかのような同様の意見は、これまでも自民党内で声高に主張されてきた。今度の文書は、そうした主張の背後に制服自衛官の意向が働いていたことをうかがわせる。」
私は改憲論者ですが、制服自衛官に知り合いはただの一人もおりませんが。改憲論で有名な井沢元彦氏だって著作の「穢れと茶碗」で「自衛隊からお金をもらっているわけでも頼まれたわけでもありません」と書いています。普通に国防・治安維持を考えたときに、憲法にはあまりにも規定がなさすぎる、と考える人は、自衛官以外にもいますよ。ライバルの読売新聞さんだって、憲法9条根こそぎ削除的改正案出してますよ。
「制服自衛官は職に就くとき、憲法を守ることを宣誓する。職務の重さゆえだ。ならば、個々の防衛政策について、それが憲法や法律との関係、あるいは軍事的な面から見てどうなのかを、あくまで防衛庁のなかで語ることが本務だろう。  現行憲法ではしたいことができない、だから憲法を改正すべきだという意見を、自民党改憲の責任者に出す。まさに政治への関与である。それを正しいと考えたなら、とんでもない勘違いだ。」
勘違いをしているのは、朝日の社説子です。法律はすべてが議員立法だと思っていると大間違いで、むしろ内閣提案、すなわち行政からの提案法案の方が多いのです。行政府は、行政上の不都合を解消するために法案を提出する。その案ができるだけ、立法府を通過するべく、政府・与党に案を提示し議論をする、というのは、日本政治の流儀です。行政機構の一員である自衛官憲法改正案を提示し、それを与党での議論の叩き台にする。何か矛盾するようなことでしょうか? また自衛官憲法を守ることを宣誓する、と書いているなら、改憲条項である96条を守ることにも宣誓しているわけですよ。だから、憲法改正案を提出することは、立派な「護憲的」姿勢です。自分の都合の良いところだけを使って、自説を押し付ける朝日の方がよっぽど非護憲的。それから、さらに矛盾しているのは、自衛隊の存在が明記されてない憲法自衛官が守ることを「宣誓」すること。社説子さん、自分で書いていておかしいと思わなかったんですかね。
「米欧先進国に比べて、日本の政治家は安全保障の知識が乏しい。」
世界で一番、安全保障の知識の乏しいのは、朝日新聞に方々でありますが。
「国会による文民統制がこれほど必要なときはない。」
大いに勘違い。国会による文民統制って何ですか。これが朝日の軍事オンチたる所以。文民統制というのは、軍隊も行政サービスの一機構である、とすることです。国会が行政府に対する掣肘は、行政府を動かすためのルール作成(立法)と内閣総理大臣の指名だけです。そして、軍務大臣(日本なら防衛庁長官)を内閣総理大臣が任命する。そして、軍内部の人事権を軍務大臣が掌握する。民意(国民の多数派の意思。総意ではない)によって選ばれた内閣総理大臣の意向は、軍務大臣経由で軍政という形で通達する。内閣総理大臣の意向、すなわち民意に従わない人間は責任ある地位から更迭される、という仕組みになっているわけです。無論、その人事に軍務大臣が失敗すれば、軍務大臣自身が更迭されるし、その責任が内閣総理大臣にまで及ぶことがある。これが軍隊に対する文民統制です。朝日は全くこれを理解できていません。
憲法草案まで作ってもらうようでは政治家落第である。」
この辺りにも、露骨に自衛官への差別感情が出てますね。何度も言うけど、他の省庁の官僚に作らせたのなら、こういう書き方は絶対にしないはず。
私がこの騒動で思ったのは「制服組は、暇か?」ということ。それも悪い意味ではなくて、自衛官幹部が暇ってことは、日本の平和の証ではあると。平和な時期に、憲法をきちんと改正して、非常時に対応できるようにしておくべきで、その中で国防のプロが意見を出したということは、より健全な方向に日本は向かっているんだなってね。