大陸に目を向けなくていいのでは

国連安保理改革のニュースが新聞に載っておりますね。A案、B案にしても、日本には好都合(もちろんA案の方がいい)だし、アメリカが日本の常任理事国入りを支持していることを考えても、昨今の日本外交はなかなかしたたかに動いているように思います。
もちろん、私は常任理事国入りするには、憲法9条が障害になると思っています。恐らく、日本が常任理事国入りすることが確定しそうな段階になって、反対する国々は「憲法9条を持つ国が、国連平和維持活動に参加できるとは思えない。そんな無責任な法を持つ国を常任理事国には推せない」と言ってくるのではないかと思います。というか、そういう言い分の方が私は当然だと思います。ですから、常任理事国入りということは、憲法9条改正が必須。現段階では、世界各国が日本に憲法9条のような「平和条文」があることを知らないんだろうと思います。
さて、日本外交を語るとき、必ず政府に批判的な方々が言うのが「アメリカよりもアジアを重視しろ」というものです。よりも、という接続詞には賛同できませんが、アジアを重視しろというのには賛成します。しかし、アジアと言っても大陸アジアの諸国じゃありません。東南、南アジアから中東、そしてオセアニア各国を重視しようということです。
アジアの国々を挙げましょう、と言うと、朝日とか毎日の人は、南朝鮮北朝鮮、中国までしか出てこないかも知れませんが、実際には台湾、ベトナムラオスカンボジア、タイ、マレーシア、インドネシアシンガポールミャンマー、インド、スリランカパキスタンバングラデシュと、圧倒的に「旧大陸儒教国家」以外の国々の方が多いわけです。そして、これらの国々も中国や朝鮮半島と同じように日本軍の占領統治下にあったわけですが、国家挙げての反日政策を取っているとは寡聞にして知りません。で、「常識」という言葉の定義は難しいところですが、より多くの人が取っている行動、より多くの人が認めている考え方、と見れば、旧大陸儒教国家の3ヵ国の言動より、他の多くのアジア諸国の言動の方がより常識的であると考えていいのではないかと思います。
あまり評判の良い話として扱われることのない「大東亜共栄圏」。確かに軍部の妄想であるという面もあるわけですが、戦前の日本が国際連盟にこんな主張をしているのです。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h10_2/jog053.html
つまり、日本は「肌の色で人種差別をするな」と世界で最初に主張した国なのです。そして大東亜共栄圏の理論上の理由は「アジアを白人主導の人種差別から解放する」というものだったわけです。
日本は戦争に大敗しました。戦争とはシビアなもので、正義だと大義だとは、結局勝敗には関係がありません。大戦における軍上層部の無能ぶりは、もっと研究されてしかるべきだと思います。軍事的無能が国民にもたらす惨禍として、研究されるべきです。
しかし、今の世界を見ると、どうですか。人種差別は制度上としては世界各国で排除されています。蔑まれ、白人の奴隷として扱われていたアジア・アフリカに多数の独立国が生まれました。特に東南アジア諸国は、お互い戦争することもほとんどなく、今やASEANという共同体を形成するまでに成熟した国家群と成りつつあります。つまり、戦争に負けた日本が提唱していたことが、今、地球全体で実現しているわけです。特に大東亜共栄圏は、ASEANという形で実現され、今やASEAN諸国から日本にもっとASEANと積極的に関わるように要請されています。
大戦で掲げた「大東亜共栄圏」構想。ここに間違いがあるとすれば、一つは軍事力を背景にした行動に無理があったということ。無論、当時は軍事力によって雌雄を決する最後の時代であったわけですから、他に解決の方法が当時はなかったかも知れない。しかし、その軍事行動があまりにも杜撰で、無理があったことは確かです。軍事の要諦は、戦力分散を戒めることにある、と言います。子供の喧嘩にも通用する理屈ですが、その基本中の基本から当時の日本軍が外れていたことは、後世への戒めとすべきです。そして二つ目は、大東亜共栄圏に大陸を含めてしまったことでしょう。朝鮮半島も中国大陸内部も、欧米列強各国の支配に置かれることがなかった。ですから、日本が「人種差別撤廃、アジア自立」を謳ったところで、彼らには伝わる素地がなかったんですね。

結局、現代に完成した「大東亜共栄圏」であるASEANは、旧大陸儒教国家は入っていません。これはASEANの無意識の知恵かも知れませんし、ただの偶然かも知れません。ただ、ASEAN諸国から日本は、少なくとも旧大陸アジア諸国からほどには嫌われていないことは事実です。ですから、日本はもっと外交の方向性を大陸から東南アジア、環太平洋、南アジア、中東に移すべきだと思います。そして思い切って、旧大陸儒教国家群は無視でよいと。
福沢諭吉は「脱亜論」の最後に「中国や朝鮮半島儒教体制から目覚めないのなら、そのときは日本は諸外国と同じように中国や朝鮮半島にやってやるだけだ」という意味のことを書いています。無論、福沢の言う「諸外国と同じように」が、大失敗でした。ですから、私の脱亜論としては「中国や朝鮮半島イデオロギー体制から目覚めないのなら、日本は中国や朝鮮半島からそっぽを向きましょう」と。旧大陸儒教国家とのお付き合いは、徒労に終わるので、とにかく関わりを持たないこと。関わりを持たざるを得ないとき(竹島問題とか尖閣諸島問題とか)は、国際的に第三者に仲裁をお願いすること。これが歴史から学ぶ旧大陸儒教国家への外交ではないかと思う次第です。
(参考資料)
ASEAN諸国における対日世論調査 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/asean/yoron.html
インドにおける対日世論調査要点 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/india/yoron00/chosa.html