なぜ、当たり前の分析ができないんだろう

何故かリンク切れしているんですが、産経新聞の集中連載企画より。
「【小泉圧勝 私はこう見る】作家・石川好氏 弱者たたきのメンタリティー
http://www.sankei.co.jp/databox/election2005/0509/050929m_pol_55_1.htm
で、内容はいずれリンク先に掲載されると思いますので、ここでは石川氏のお説を箇条書きに。(内容に間違いあればご指摘下さい)

  1. 郵便局のサービスの恩恵は大きく、誰も民営化して欲しいと思っていない。
  2. 郵便局は公務員の中でも優秀で、役場の人間よりマシである。
  3. 郵政民営化に反対した議員を追い出して弱者にし、刺客を放って、国民が寄ってたかって弱いものいじめに走った。
  4. これはホームレスを襲撃する若者と同じメンタリティーである。

恐らく概ね、このような内容であったろうと思います。ホント、国民をバカにするのもほどほどにした方がいいと思います。これでは、郵政民営化に反対した方々をもバカにしていると思うんですけどね。石川氏は、郵政事業とは郵便事業だけだと思っているようですので、屋山太郎さんの論文をお読みになった方がよろしいかと思います。
で、今回の選挙はそれほど難しい分析が必要でもないわけです。小選挙区制の上に、自民党民主党の政策の力を問う、というごく普通の民主選挙が行われただけなんですね。小選挙区制だったから、過半数の得票率がなくても、2/3以上の議席自民党に入ったと。すでに、イギリスの総選挙で同じような状況が起きているわけで、何で世の中の人がそんなに右往左往してるんだろうと思いますね。
で、当たり前に普通に分析されているのが、花岡信昭氏。
「改めて「9・11総選挙」総括」
http://www.hanasan.net/xoops/modules/wordpress/index.php?p=83

結論的にいえば、日本の政党政治を踏まえた議会制民主主義が見事なまでに花開いたという意味で画期的な選挙であった。ファシズムとは正反対の民主主義の完全勝利である。ファシズムだのあの戦争に突入していった時代を思い出すだのといった妄言をのたまう向きは、どうか、政治学の基本的な教科書でいいからお開きいただきたい。
選挙制度のところに、小選挙区制というのは獲得した票数に比べて過剰な議席を与えるシステム、と書いてあるはずだ。日本の場合は比例代表との並立制をとりあえず採用したのだが、その小選挙区制の特質が導入後4回目にして、ようやくずばりとあらわれたのである。

比例代表制は「鏡のように民意を反映するシステム」とされる。しかし、民意は多様だから多党制になり、少数党の連立政権に陥りやすい。かつてイタリアは6番目か7番目の政党が加われば過半数に達するという状況になって、そのキャスティングボートを握った政党の党首が首相になったことがある。これでは政治は混迷するばかりだ。
小選挙区制は2大政党制を導きやすく、そうなると一方が必ず多数を制し、強力な政権ができる。しかし、政権運営に失敗すると次の選挙で鉄槌を浴び、大逆転ということになる。政権交代が容易に行われるシステムが議会制民主主義にとっては最も望ましい。
ほかの国ではこういう前例がある。
1993年10月、カナダの下院選(定数295)。与党の進歩保守党が154から2議席に激減、キャンベル首相も落選した。1997年5月、イギリス総選挙(定数695)では、与党の保守党が321から半減、ブレア労働党政権が誕生した。
小選挙区制は政党政治・議会制民主主義にとって、現在考えられうる最高の形態である。となると、次の総選挙で民主党がまったく逆の結果を出してくれれば、その時点で民主主義の完全勝利は一応の完結編を迎えるということになる。

まあ、これが当たり前の分析なんですね。面白くもなんともないかも知れませんが、それが事実なんだし。評論家や知識人という方々は、「独自」の分析が必要なんだろうけどね。でも、石川氏のようなあまりにひどい分析はどうかと思います。選挙結果を受けて「弱いものいじめ」とは。