村上氏が目を付ける → 経営陣以外は優秀であるという意味では?

最近話題の村上ファンドのお話。阪神だけじゃなくて、TBSにも触手だそうで。
「TBS、買収防衛策の発動も 村上ファンドの動向焦点」
http://www.sankei.co.jp/news/051014/kei051.htm

TBSは14日、インターネット商店街最大手の楽天から提案された経営統合について、対応策の検討に入った。株式を大量に取得、共同持ち株会社設立を迫る楽天の申し入れは、事実上の「買収提案」との見方が強い。TBSの株価は同日午前、4年10カ月ぶりに4000円に一時乗せ、年初来高値を更新。同様にTBS株を買い集めた村上世彰(むらかみ・よしあき)氏率いる投資ファンド村上ファンド)が売却益を狙い株を楽天に売却することも考えられ、TBSが買収防衛策を発動する可能性もありそうだ。

マスコミやプロ野球が、村上ファンドだのライブドアだの楽天だのに狙われているわけですが、こういう人たちは自分たちが狙われると「社会の公器」という立場を掲げて、急に「弱者」ぶるところがありますね。そういう意味では、産経新聞はまだ「公器」という立場よりも自分たちの「正論路線」の堅持を掲げて、堀江社長に反論していたのは見事だったと言えます。私が購読紙を変えたのも、そういう産経の姿勢(「公器」に逃げず、自分たちの主義主張を述べるところ)にあったわけですが。
この件に関しては、泥酔論説委員さんの「泥酔論説員の日経の読み方」に面白い記述がありますので、まずはご紹介。
「タイガースはだれのものか」
http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=329372&log=20051013

とは言え、これだけの買収がいとも簡単に行えるようになったのは、やはり美味しい話ならば資金を出そうという環境があるからでしょう。
お金の流れというのは国境すらも簡単に越え、原油高で儲かったオイルマネーもわが国に還流されていますし、運用先に悩んでいた邦銀の貸出先も外資系ファンドだったりします。
こういうお金を誰に賭けるのかと言えば、儲けるのが上手い人というのは極めて合理的なことでして、派手な話題で注目を集めればそこにマネーも自然と集まってくるという仕掛けです。
一方、サラリーマンにとって出世の極みこそが社長であるなどと勘違いしている経営者にしてみれば、カネにモノを言わせ会社を買収してくる輩なんぞは「土足で他人の家に上がり込む」強盗のようなものでして、これは犯罪的な話で言語道断だということでしょう。
しかしどうなんでしょうか、企業価値を低いままに放置しておいた経営者というのが果たして会社にとってプラスだったのかと問われれば、決してそうではないと思うのです。
新興勢から狙われるのは、経営的なポテンシャルはあるけれど経営者そのものが無能な企業のようです。

こう言った方々のご尊顔を拝しますと、買収側は生き馬の目を抜くような経営者としての矜持があるよに感じますが、買収される側は「なんでこんな御仁が社長に」と言うぐらい凡庸な人物に見えます。
いや凡庸なら凡庸でも結構なのですが、宝の山のような自社の潜在力を放置しておいて、いざ買収されたら被害者のように振舞うのだけはぜひ止めてもらいたいものです。

新聞、テレビを見ても、これほどに適切な解説をしている人が果たしているでしょうか。
まず、大事なのは、日本で最も有名なファンドマネージャーが投資先に、日本国内の企業を選んでいる、という点です。これははっきり言って、日本の景気が上昇基調にあることを示す一つの材料だと思います。
それから、会社と会社員の関係のこと。未だに経営陣は、社員からの「忠誠」を得ていると思っているような発言は散見されますね。これは、むしろマスコミに多いような気がしますね。私の勤務する一メーカー程度だと、社長の顔なんて、会社員生活で一度でも生で見れるかどうかです。社長が変わったところで、拍手はすれど悲しむようなことはあり得ませんわね。それよりも、村上ファンド楽天に目を付けられるということは、経営陣はともかく社員を含めた会社の「資産」は認められているというわけで、案外、喜ばしいんじゃないの、と思ってしまうくらいですけどね。まあ、球団保有企業やマスコミという世界は、製造業とは少し違っているのかも知れませんが。
また、私は、阪神タイガースだけでなく、プロ野球団は株式公開をすべきだと思っていますし、その方がよっぽどファンのためになるわけです。球団は「オレのもの」と思っている典型的な人間がナベツネみたいな方なんですが、逆に「オレのもの」に飼われているからこそ、選手たちもファンの声が十分に届いてなかったりするんじゃないかと思うわけです。株式が公開されれば、選手たちは自分たちのプレーが、そのまま株価というわかりやすい指標に示されるわけでして、法外な年俸要求を出すような輩もいなくなるように思えるのですが、どうなんでしょうか。
そんな中で、こりゃ本当に面白い、と思ったのが、阪神タイガースにしかできないと思われる「阪神タイガース宗教法人化」。江草乗さんの「江草乗の言いたい放題」は、結構アリだったりして、と思うような面白さです。
「タイガースが「神」になった日」
http://www.enpitu.ne.jp/usr4/bin/day?id=41506&pg=20051014

宗教法人であれば株式を上場することはできない。翌日から阪神電鉄株はストップ安を続け、村上ファンドは500億を超える大量の損失を出しながら値下がりした阪神電鉄株を放出する羽目になった。顧客から預かった資金を大量に目減りさせてしまった村上氏は二度と立ち直れないほどのダメージを受けたのである。
2006年春、日本初の宗教法人チームとして阪神タイガースはデビューした。1100万人の信者を抱える、本邦最大規模の新興宗教としてタイガース教はスタートしたのである。入場券ではなく観客は「お布施」と引き換えに入場札を与えられる。甲子園球場、そこはこれまでも阪神ファンにとっての聖地だったわけだが、宗教法人化することで本当に「聖地」となったのである。そこで年間に約70試合行われるのは、野球の試合ではなく神との交歓の儀式となった。
球場に詰めかけた信者たちに、かつては選手と呼ばれた伝道師たちが最高のプレーを通じて興奮と歓喜を与え、試合の終わりには必ず「六甲おろし」と呼ばれる聖歌が合唱された。スター選手は信者にとってまさに「現人神(あらひとがみ)」となったのである。宗教法人となったタイガースは非課税の特権を得ることになり、選手の年俸がいくら上昇してもそれを上回る莫大な剰余金を生み出すこととなった。電鉄本社は甲子園球場を宗教法人にレンタルすることでその使用料という収入を得る形をとった。また、宗教法人は営利事業を営むことができないため、甲子園球場内の売店などはそのまま従来の業者の既得権益が保障されることとなった。信者のほとんどは聖地への行き帰りに阪神電車を利用していたから電鉄は相変わらず巨額の運賃収入も得ていたのである。

原文は、色、フォントサイズなどが変更されているので、そちらもお読み下さい。それにしても、この案、政府が認可しないだろうと言う点を除けば(まあ、そこが一番高いハードルだけど)、結構現実的で面白い気もする。非タイガーズファンから見ると、熱狂的阪神ファンってほとんど宗教的なノリですからね。