家のルールと信仰

1.28に書いたエントリにコメント頂いた方のおかげで、また皇室ネタで書くことにいたします。
女系天皇が何故あり得ないのか、という話をちょっと海外の王室から見てみることにしてみたい。そう思っていたら、最近何かと話題の大磯正美先生のコラムに書いてありました。
「これは皇室のお家騒動なのか?」
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/5562/column/column073.html
えっと、何だ、ここに東宮家と秋篠宮家の相続争いってなことが書いてあったんですか(汗)。私の1.28のエントリの後半、パクリみたいだ・・・(汗)。しかも言いたいことは、大磯先生の書かれている通りですし。
まあ、それはともかく、このコラムの中で、私が興味深いと思ったのは、ここ。

第2の点は、偶然、そのヨルダンが日本と同じ男系男子の一系王統を維持しているという類似である。
 ヨルダン王家は、近代国家としては第1次大戦後に英国が建てたので古いとはいえないが、イスラムの開祖ムハンマドの直系を継ぐアラブ随一の名家であり、歴史的に聖地メッカの領主として君臨していた。同じく歴史の浅いサウジや湾岸首長国なども、またムハンマドの傍系を継ぐモロッコ王国も、同様に男系相続であるが、ヨルダン王室はその頂点に位置するため、皇太子問題は世界から注目されることになる。
 イスラム諸国が一般に親日的なのは、そうした共通の伝統が背景にある。それに、皇室はムハンマド一統より確実に数百年も古いから、それだけ尊敬の念もプラスされる。
 インドネシア独立の英雄スカルノ大統領は、天皇陛下に特別の尊崇の念を抱いていたといわれるが、その理由もモスレム(イスラム教徒)の意識に基づくものだったのだろうと思われる。
 もし、いま日本が、現実の必要に迫られてもいないのに、男系一統を捨てたと認識されたなら、イスラム世界の日本を見る目が確実に変わるだろう。もちろん、いい方に変わるはずはない。なぜ日本は、イスラムと同じ「正しい後継」を捨て、正しくない「イスラエルの後継方式」に乗りかえるのか、と質問するだろう。
 実は、ムハンマドが生まれたアラブは男系社会であり、ユダヤ人社会は対照的に母系社会である。イスラエルの国内法では、「ユダヤ教徒」と、「ユダヤ人を母として生まれた者」をユダヤ人と認定している。
 この違いの理由は、両民族共通の祖であるアブラハムが、まず端女(はしため)に生ませた長男イシマエルの子孫がアラブ民族となり、のちに正妻が生んだ次男イサクの子孫がユダヤ民族となったという神話にある。
 すなわち、アラブ民族は父方を重視し、アブラハムの長男の系統であることを誇りとする。対するユダヤ民族は、アブラハムの正妻の系統であることを誇りとし、母方の血を優先させて今日まで至っている。

これは実に興味深い記述ですね。つまり、王家の相続という「家のルール」は、そのままその家系の信仰を表すものなのですね。つまり、ヨルダン王家にとって「女系継承」は、母方の血を優先する思想になる。その思想はユダヤ人のそれと同じ。だから、決して受け入れられないわけです。母方の血を優先する思想を持つ者を、彼ら(アラブとユダヤ)ではユダヤ人と言うわけですから。これは完全に信仰の領域の話です。
同じことは、もちろん天皇家にもあります。その鍵は、実は神武天皇ではありません。天照大神にあります。伊勢神宮の神様ですね。天照大神は一般的に女神とされます。そして、女神の孫にあたるニニギが、天空から地上に降臨し、日本列島を治めるということなっています(天孫降臨神話)。ニニギから数えて3代目が神武帝。ここで「天皇」と名乗ったことになっています(実際、この頃は「オオキミ」などと呼ばれていたようですが)。
では、何故男系継承が天皇家のルールなのかというと、これは「女性天皇」と「女系天皇」が「天空」にいた存在であり、それは崇敬の対象になっている、ということだということだと思うのですね。つまり、天空にいた始祖が、女性天皇女系天皇のセットですから、女性天皇女系天皇はすなわち天皇家の始祖である、ということなんです。以後、男系を重ねてきたのは、始祖への崇敬を意味していると私は考えています。もし、女性天皇女系天皇をセットで作ると、それは新しい「始祖」を作ることになる。だから、天皇家は代々男系継承をしてきたのだと思います。
同様のエントリは、拙日記05.10.28付に書いております。王家というものは、基本的に先祖崇拝を持つものです。世界基準が何だか知りませんが、もしあるとするなら、各王家に伝わる信仰を大事にすること、すなわち各王家のルールを尊重することではないかと思う次第です。
皇室関連のエントリでは、いつも言っていることですが、この問題は我々が決める問題ではありません。皇室がよくお話し合いになって、決めるべき話です。その上で、皇室典範の改正が必要であったり、予算が必要であったりするならば、その旨、宮内庁を通じてご公表下さればよろしいのではないでしょうか。我々は、皇室のご意思に対し、それが余りにも国民に負担を強いるものでなければ、粛々と受け入れるべきであろうと思います。
関連エントリ「■[社会] 女系は特別な存在」
http://d.hatena.ne.jp/sanhao_82/20051028/p2