これがヨーロッパの現実なのかもね

「シリアの警備不十分と抗議 デンマークノルウェー
http://www.sankei.co.jp/news/060205/kok030.htm

イスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画をデンマーク紙などが掲載したことに反発したシリアの同教徒が4日、首都ダマスカスのデンマークノルウェー両大使館に放火したことについて、両国政府はシリア政府に警備態勢が不十分だったと抗議した。ロイター通信が伝えた。

まず(こんなところ見てないと思うけど)、イスラム教徒の方々へ。こういう暴動を起こすことは、ある意味では風刺漫画を描いた人間の思う壺です。難しいことは百も承知で申し上げますが、お止め下さい。
ただ、デンマークもきちんと謝罪すべきです。事の発端ですし、確かにメディアがやったことを政府が謝罪するというのは筋が通らぬ、という言い分もあるでしょう。しかし、貴国の国民がイスラム教徒を侮辱した、という事実は変わりありません。
我々は「偶像崇拝」する民族です。仏様にしろ、神様にしろ、その実物を作って拝むことに何の違和感もありませんし、下手したら生きている人も、神様扱いしちゃうところがあります。だから、今回のイスラム教徒の暴徒化に関しても「そこまでしなくても」と思ってしまいます。まして、毎日の新聞に政治の風刺漫画が載りますからね。風刺漫画に怒ってどうするのよ、というところがある。
まして、日本の宗教ってのは「絶対的な神」という存在がありません。天皇家の祖先神である天照大神は、確かに日本の神道の中では、最も大きな存在ですが、地上の全てを作った「絶対神」というものではありません。神様にいろいろ序列がある中で、その一番高い地位にあるのが太陽神・天照大神、という程度です。
ところが、欧米に行くと話は違います。世界を作った絶対的な「神」がいる。その「神」の存在は、まさに絶対的なものなんですね。
イスラム教とキリスト教、そしてユダヤ教は、実は同じ聖書を持ちます。要するに、絶対神の存在は同じ人(?神?)を崇拝しているんですね。よく我々が勘違いしているんだけれども、キリスト教はキリストを、イスラム教はムハンマドを崇拝していると思っている。しかし、少なくともイスラム教においては、ムハンマドは崇拝の対象ではないんです。
いや、こう書くとまた御幣があると思うんですが、要するに、ムハンマドは「神」とは全く別の者である、とイスラム教徒は理解している。ムハンマドは、絶対神イスラム教ではアラーと呼ぶ)の言葉を正しく伝えた「預言者」である、ということなんですね。
神は預言者ムハンマドに自分の考えを預けた。ムハンマドは、神から預かった言葉を民衆に伝えた。ムハンマドは「偶像崇拝」を禁じた。何故なら、偶像崇拝とは「神」以外の者を拝むことになるから。神はこの世の全てを創ったのだから、神を人間が作るというのは、神への冒涜である。大まかに言えばイスラム教徒はそのように理解しているわけです。
その「正しき言葉」を伝えたムハンマドの「絵」を描くなどというのは、まさにムハンマドの「正しき言葉」への反論、すなわち「神」への冒涜に他ならないわけです。だから、イスラム教徒が怒ったわけですね。
偶像崇拝を禁じる、ということに対して、私たちは少し理解が足りないと思います。各所のblogを読んでみますと「絵を見る限り、そんなひどいものじゃない」「イスラム教徒も見てみればいい」という意見が散見されます。しかし、本質的に「ムハンマドを描く」ということが、彼らにとっては許しがたいことですし、さらに「描かれたムハンマド」を見ることなど、彼らにとっては戦慄というか恐怖というか、そういうレベルの「とんでもないこと」なのではないかと思うのです。