自分で蒔いた種なのだが

過剰反応だと思う人は、やっぱり理解が足りていないと思います。
「「世界的危機に直面」 風刺漫画でデンマーク首相」
http://www.sankei.co.jp/news/060208/kok029.htm

デンマークのラスムセン首相は7日の記者会見で、イスラム預言者ムハンマドの風刺漫画掲載に反発する抗議行動が欧州、中東、アフリカ、アジアにまで広がっていることについて「われわれは拡大する世界的な危機に直面している」と強い懸念を表明した。
(中略)
首相は会見で、抗議デモに対する各国政府の統制が利かなくなる恐れがあると述べ、イスラム諸国家や国民に「互いの尊敬と寛容の精神」に基づく対話による解決を呼び掛けた。またブッシュ米大統領から電話で、暴力に反対するデンマーク政府を支持すると伝えられたことを明らかにした。

何度も申し上げますが、この件に関しては、明らかにデンマーク紙が悪い。偶像崇拝を禁じる宗教への理解が足りません。これに対して、ヨーロッパ側は次のように言っているようです。
「風刺漫画の掲載拡大 「表現の自由」と欧州各紙」
http://www.sankei.co.jp/news/060203/kok035.htm

このうちフランス紙ルモンドは3日付の一面に、イスラム教の預言者ムハンマドの顔とみられる風刺漫画を掲載。「私はムハンマドを描いてはいけない」というフランス語の文を縦、横にたくさん書いて、全体としてムハンマドとみられる人物の顔を浮き彫りにしている。
同紙は同時に社説で、「イスラム教徒にはムハンマドを風刺した絵はショックかもしれないが、民主主義においては、人権を踏みにじるケースを除き、言論を取り締まることはできない」と表現の自由を主張した。

なるほど、イスラム教徒の信教の自由は、人権に含まれないということのようです。フランス紙ルモンドといえば、朝日新聞がお気に入りのメディアの一つ。そのいわば「博愛」メディアが、イスラム教徒の嫌がることを率先してやり「これこそ民主主義」という。それは民主主義ではなく、キリスト教主義でしょうが。
それに比べると、英国民はしっかりしているように思いました。WEBにはありませんが、本日の産経新聞の紙面に掲載されていた記事です。
「掲載反対が67% 英紙調査」

【ロンドン=時事】七日付の英紙タイムズが伝えた世論調査結果で、デンマーク紙がイスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画を掲載した問題をめぐり、英国人の67%が、言論の自由はあるが、イスラム教徒の立場を尊重し、掲載すべきではなかったと考えていることが明らかになった。
英国では、BBC放送などが問題の風刺画を放送したが、新聞はいずれも掲載を見送り、フランスやドイツをはじめとする欧州大陸の新聞が言論の自由擁護のためとして、転載に踏み切ったのと対照的な姿勢を示している。この世論調査ではまた、「イスラム教徒は言論の自由の原則を認めるべきだ」との回答も65%に達した。

さすがは民主政体のご本家です。最近、日本の外交で何となく忘れられているイギリスですが、私はイギリスこそ、日本が最大の同盟国として選ぶべき相手だと思っています。いきなり、自分たちの主義主張を掲げるのではなく、相手をまず考えた上で行動し、その上で自分たちの考え方も理解してもらう。過去にはアジアやイスラム世界に手荒いことをやったイギリスですが、その手荒さによる失敗から学んだ部分も多いようです。
ただ、少し怖いのは、日本でもこれは起きる可能性があった事件だということなんですね。特に日本人は宗教音痴ですし、特に一神教への理解が足りないように思います。この事件で問題になっているのも「ムハンマドをテロリストのように描いたこと」だと思っている人が多そうな気がする。しかし、そうではなくて「ムハンマドを描いたこと」自体が問題なんです。そもそも、キリスト教徒にとって聖人でもなんでもないムハンマドは、絵に描く必要はないはずです。そこがこの問題の根本だと思います。
この問題において、日本はデンマークを始めとした大陸欧州の肩を持つ必要はありません。むしろ、大使を呼んで、「イスラム諸国に謝罪しなさい」と言うべきだと思います。また、イスラム諸国の大使に対しても「日本はイスラム教徒がこのような行動を取ることを望まない」と一言申し上げればよい。イスラム諸国にとっても、拳を振り下ろす先がなくなっているのです。ただ、日本が「私の顔を立ててくれ」と一言言えばいい。その役割が出来る国は、恐らく日本しかない。また、何かとキリスト教世界だけを見がちな日本国民にとっても、世界にはイスラムという大きな世界がある、ということを認識できますし、ましてやアジアは実はイスラム教徒が非常に多いということも認識するよい機会になると思います。