でないと、アメリカという国は矛盾する

自由を最大の価値として標榜し、ある意味、世界にそれを押し売りして歩いているのが、アメリカ合衆国という国なんですね。その国の特性をわかっていたら「アメリカも靖国参拝に反対」という記事は書けない。あくまで、アメリカにもそんなこと(私に言わせたら寝言)を言うヤツがいるんです、という程度のことになるはずなんです。
で、アメリカはほぼ公式に、靖国問題外交問題にあらず、との立場を表明しました。

「米国防長官、「靖国」米は関与せず 中国に抑制求める」
http://www.sankei.co.jp/news/060608/kok009.htm

【ワシントン=古森義久】米国のドナルド・ラムズフェルド国防長官が日中両国間の靖国問題について、米国は関与しないというブッシュ政権の方針を明確に表明したことが公表された。同長官は過去の戦争の歴史に対する他国の態度への不干渉をも提案し、靖国問題では中国側にむしろ抑制を求める形となった。
国防総省の6日までの発表によると、東南アジア歴訪中のラムズフェルド長官は4日、シンガポールで「日本の小泉純一郎首相の靖国神社参拝について日中関係の安定のために米国が干渉することはないか」という記者の質問に答えて、「この問題はその地域の当事者たちの処理に任せる。日本も中国も私からの助言は必要ないだろう」と語り、ブッシュ政権として靖国問題には関与しないことを明確にした。
さらに、国防総省の発表によると、同長官は3日、シンガポールで開かれたイギリスの国際戦略研究所の会合での講演と質疑応答でも日中両国間の靖国問題など歴史問題に触れ、「(戦争などの)歴史をまったくの過去のことにするには時間がかかるが、米国と日本はそれを過去のこととして清算した」と述べた。同長官はさらに「他の諸国もそのような相互の歴史を過去として清算し、21世紀を前進することができれば、すべての国々の利益にかなうことになる」と語り、過去の戦争の歴史を現在の国家間の案件として問題視することへの批判を表明した。
ラムズフェルド長官が日中関係への論評で「過去の歴史を過去のこととして清算する」という点を強調するのは、靖国問題などでの中国側の対日姿勢への遠回しな抑制示唆と受け取れる。

イラク戦争で、フセインを形式上かも知れませんが、イラク人によって裁判をしているのは、東京裁判の反省です。東京裁判は、一人のインド人判事・パール氏によって、その正統性を徹底的に問われた。また、SF講和条約においても、メキシコとアルゼンチンは、東京裁判には同意しない、と表明した。そのことは、アメリカにとって大きな学習効果があったということなんでしょう。
また、過去を清算するために行ったのが、講和条約であったり、友好条約であったりするんですね。このラムズフェルド発言は、日シ間にはきちんと友好条約が締結されているのに、それを遵守しないシナ共産党政府への批判ということです。
ついでに、本日朝刊紙面に掲載されていた、古森レポートも紹介しておきましょう。こちらは、一民間人のマイケル・グリーン氏による靖国問題分析です。
「参拝中止要求「悪い間違い」」(産経新聞6.8付朝刊)

【ワシントン=古森義久】ブッシュ米政権の国家安全保障会議NSC)の前アジア上級部長、マイケル・グリーン氏はこのほど産経新聞との会見で、日中関係と米国の立場などについて語り、中国が日本の首相に対し靖国神社参拝の中止を要求していることを「悪い間違い」と批判し、関係改善にはまず中国側の譲歩が必要だと述べた。同氏はブッシュ政権靖国問題に関与する意図はなく、日中間の紛争では、基本的に日本を民主主義の同盟国として支持する姿勢であることをも明らかにした。
グリーン氏は、中国政府が小泉純一郎首相の靖国参拝に反対し、日本側が参拝を中止しない限り、次期首相も含めて首脳会談を拒むとの姿勢を示していることに対し「参拝中止を日本の現在と将来の首相へのリトマス試験紙として突きつけており、この高圧的な要求は悪い間違い(バッド・ミステーク)だ」と述べるとともに、日中関係の改善のためには「まず中国側がただ一つの争点で関係全体を悪化させるとうい靖国問題への強行アプローチを軟化させて、対日リトマス試験紙をやめなければならない」との見解を表明した。
同氏はその論拠について「中国は従来の軍拡に加え、日本に対し歴史認識を押し付け、国連安保理常任理事国入りへの反対、尖閣諸島付近など東シナ海での一方的活動、潜水艦での日本領海侵入など脅威的、挑発的な行動を続けて、険悪な雰囲気をつくったうえで、さらに次期首相にまで靖国に参拝するなと求めており、日本側がその要求に応じないだけでなく中国への反感を増すのは自然だ」と解説した。
グリーン氏は中国側が首相の靖国参拝を攻撃する理由に関しては「参拝は中国側の神経にさわる側面も確かにあるが、中国政府は過去には首相の参拝を無視した場合も多く、日本側で防衛を強化しようとする中曽根(康弘)氏や小泉氏が首相の時に激しく問題にしてくるパターンがあり、屈折した政治利用だといえる」と述べた。
グリーン氏は、2001年に現ブッシュ政権1基目でNSCアジア部長、04年1月から2期目の同政権の05年12月まで大統領特別補佐官兼NSCアジア上級部長を務め、現在は戦略国際問題研究所CSIS)日本部長。