日銀総裁ともなると盗人との戦いだな

さて、連日マスコミを賑わせているのが、福井日銀総裁村上ファンドのニュース。もう記事の引用はしませんが、私の考えでは、資金運用の一環なので、別に何も問題ない、という立場です。むしろ、日銀総裁ともあろう金融のプロが、自分の資金の運用で大損失するような方だと、日本の金融政策の舵取りを安心して任せられませんけどね。多分、この辺って、欧米では問題にもならんところでしょうな。
もし、福井総裁が我らが滋賀県の地銀である滋賀銀行の定期預金や投資信託を行ってたらどうなんですかね。これは「道義的責任」は取らなくていいんですかね。あるいは福井総裁が知り合いに1000万円を貸して、利子を受け取ってたら、これも「道義的責任」を取らなくちゃならんのですかね。
いや、日銀総裁ともなると、銀行や投資信託も出来ないし、知り合いに金を貸してくれと頼まれても断らなくちゃならないし、しかもタンス預金してるもんだから、インフレになったら対応できないド貧民に転落するし、何よりも自宅でお金を持つことになるんだから、盗人との戦いですな。で、セコムとか綜合警備保障みたいな会社に保守サービスを依頼し、しかもそのステッカーを自宅に貼ろうものなら、警備会社の宣伝をしている、として「道義的責任」を問われると。日本の盗人稼業の皆さん、今後は日銀のお偉いさんのお宅がねらい目ですな。
そもそも村上氏は検察が「こういう容疑で貴方を逮捕します」ということに同意しただけでしょ。その容疑は本当に罪なのかは、まだわからんのですよ。その辺をすっ飛ばしているマスコミ報道って本当に大丈夫なんですかね。
だいたい、今回の一連の報道って、ほとんどが検察当局からのリークでしょ? 捜査情報の漏洩じゃないですか。Winnyどころの騒ぎじゃないはずです。だから、本来なら検察は、リークした連中を徹底的に吊るし上げなくちゃならないはずです。しかし、検察はリーク情報について一切コメントしていない。何故か。
ここからは私の個人的な推論です。
検察は恐らく、村上氏にしろ、堀江氏にしろ、どちらも裁判で有罪に出来る100%の自信がないのだと思います。しかし、両者とも検察に言わばチャレンジした。法の抜け穴というのは、実際には「合法」ということです。だから、日本社会の代表者としての検察は、何としても社会的な制裁を加えなくちゃならないと考える。そこで、検察が利用したのがマスコミなんです。マスコミに情報をリークすることで、マスコミが報道し、マスコミがシナリオを勝手に書く。法ではなく、マスコミという自称・国民の代弁者によって叩く。こちらは代弁を頼んだ記憶はありませんが、マスコミがひたすら叩く。これによって、株価は下げられるし、逮捕してもいい、という雰囲気を作り上げることができる。裁判で有罪に出来なくても、彼らにとって最良の時間を奪うという制裁が可能になるわけですね。
言ってみれば、マスコミと権力(ここでは行政権)が癒着しているんです。実際に、マスコミが勝手に書いたシナリオと、その後始末のいい加減さについては、次のように指摘されています。
「総研 詐欺立件を断念」(「泥酔論説委員の日経の読み方」より)
http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=329372&log=20060608

あれだけ連日大騒ぎしていたこの事件ですが、姉歯氏がウソをつき単独犯行であったことについては、あの勢いほど報じられていません。
警察を捕まえる警察がないのと同様に、マスコミを批判するマスコミがない以上、彼らが黙っていれば忘れ去られるとでも思っているのです。
しかしあの報じ方が住民をも何ら救済してなかったことを考えると、それで済むのかと。

反省もしなければ責任を取ることもないのがジャーナリズムだとすれば、そんな人たちが振り回す正義というのが実に危ない代物だと言うことになります。

しかも、今回、村上ファンドの件でマスコミが躍起になっているのは、ニッポン放送というマスコミに手を出したということが一つ。さらに、今、マスコミにとって打ち出の小槌になっている阪神タイガースに手を出したこと。これが彼らの神経を逆撫でしたということでしょうね。
自分たちの利権に関わることであれば、「正義」「道義」を振りかざすのがマスコミなんですね。で、それに踊らされる人々。
以前にも書いたことなんですけどね、マスコミとその報道を真に受ける人(今回の報道なら、福井総裁辞めろ派)っていうのは「明日はわが身」ということを全然考えていないんですね。日銀総裁ってのは、確かに一般人からそうそうなれる身分じゃありませんが、同様の公的な立場には、いつなるかわからない。マスコミというのは、その文脈で言うと「オレたちは絶対に公的な立場に立たない」と言っているようなもの。そもそも福井総裁の年齢で1000万円くらいの預貯金を持っている人なんて珍しくもない。常識で考えれば、老人が1000万円の投資信託をやって何が悪いんですか、ということになる。それなら、社会の公器だと自称するマスコミの関係者は、すべからく投資信託もせず、銀行に預金もしていないんですかね。銀行の利子ってのは、銀行が我々に代わって資金運用をした結果の余剰金が我々に還元されたものじゃないですか。そんなら同じでしょ? で、社会の「公器」と言いながら、オレは絶対に「公」には立たない、という主張をする。都合によって公と私を使い分けている典型的な例がマスコミでしょうが。そんな無責任な連中の言説を私は信用できませんな。