だから政権が取れない

最近、出張が多い。出張が多いと、移動の時間が長くなる。勢い、考えることが長くなる。だから、書くことも長くなる。最近のこうした妙な文章は、これが原因である。
慶事続きの世に、日本にとって久々にめでたくないニュースがあった。民主党の小沢代表が、無投票で再選されたことである。こともあろうに、「民主」と名乗る政党の代表が、無投票で決まるのである。岡田を無投票で選んだ末が、あの衆院選の惨敗であったと気が付かぬところが、さすがである。未だに、小泉のパフォーマンスに負けた、とか思っているのか。マスコミ向けに盛んなアッピールをし、さらにマスコミに徹底的に保護されていたのはどちらか。ともかく、今でも200名近い国会議員を有し、日本国内では2番目の勢力を持つ政党である。その中が隅から隅まで同じ意見か。ソ連共産党でも、そうではなかった。だから粛清があったのであろう。民主党にはそれもない。挙党一致。果たして、国民はどう見るか。少なくとも、私はイカガワシイとしか思えない。
そんな民主党だから、無能者が要職から排除されぬらしい。
「<民主代表選>小沢氏再選 「打倒安倍」に照準」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060913-00000010-mai-pol

一方、鳩山由紀夫幹事長は党広報戦略本部に対し、安倍氏の祖父・岸信介元首相の研究を指示した。幹部の一人は「安倍氏は岸氏のやったことをすべて肯定したいだけ」と指摘。別の幹部も「岸氏の業績をすべて否定はしないが、A級戦犯容疑者であり、危険な側面もある。安倍氏が政治的に岸氏のDNAを継いでいるのか、検証する必要はある」と述べた。
安倍氏の主張について菅氏は「歴史認識を含め、従来の自民党からずっと右に寄った『保守亜流』。『保守本流』は民主党だ」と語る。同党は「安倍政権」が伝統的な自民支持層でさえついていけない「右寄り」とアピールすることで、穏健な保守層を取り込む狙い。「岸信介研究」もその延長線上にあるようだ。

ネット上では、鳩山の「DNA」について、遺伝を問題にするのか、という向きがある。さすがの鳩山もそこまでは言っていないと思う。いや、鳩山だから言いそうな気もする。ともかく、そうではないことにする。しかし、それを差し引いても、鳩山がとても立法府の構成員として「常識」がないことが、この発言でわかる。
岸信介氏は、鳩山が言うように「容疑者」である。容疑者がすべて犯罪者ではないことは、別段説明しなくても理解できるだろう。しかし、この常識すら、鳩山には通用しないらしい。安倍氏が「容疑者」のDNAを継いでいることよりも、そして鳩山自身が国会で「統帥権干犯」を言った人間の末であることよりも、「容疑者」が必ずしも犯罪者ではないという「常識」が通用しないことを、私は恐れる。そして、こういう人間を幹事長という要職に据えたままにしている民主党という政党を、私は恐れる。
そもそも「A級戦犯」が日本国内はおろか、世界のどこにも存在しないことを、彼らは知らぬ。マスコミが知らぬのはよい。すでにそういう期待すら、マスコミにはしていない。しかし、立法府の構成員は、我々の税金によって養われている。自らの先達が議論し、国会という国権の最高機関において結論を出したことを、覆そうとしているのである。このような不勉強な輩を、我々の税金で養うのは甚だ無念である。最近の国会議員は、過去の議事録は読まぬらしい。「戦犯赦免」に関する議事録は、インターネットで読むことができる。私も全文を印刷し、通勤の際に読んだ。場末のサラリーマンがやることを、国会議員がしないというのは、いったいどういうことなのか。国民的議論が必要だ。これは鳩山が好き好んで使う言葉である。しかし、国民的議論をする場はどこか。テレビの討論会か。国会に決まっている。国民的な議論をするために、国会は存在する。テレビや新聞の討論会なぞ、国民とは全く乖離した場所にある。だから、私はその類の番組は一切見ない。参考程度に、インターネット上にテキスト化されたものを読む程度である。その国会が、かつて「戦犯は犯罪者ではない」と決議し、それに基づき、国際法上の手続きを行い、国内外にその種の犯罪者が存在しない、という「事実」を勝ち取った。この決議に意義があるなら、決議の廃案を求め、「A級戦犯の赦免取り消し」という法案を提出すべきである。
菅の発言については、またお得意の言葉遊びか、という程度の感想しかない。こういう言葉をマスコミに向ければ、国民の支持を得られると思っている、その楽観的なところはある意味、素晴らしいと言える。いつまでも野党でいられる精神力の根源であろうと思う。
民主党よ。もっと勉強しろ。特に、心ある国会議員は、過去の議事録を、できれば帝国議会の頃から読め。自らの先達が何を議論し、どういう解決策を導いてきたか、そこに書かれている。教科書やマスコミ報道が伝えない、近代以降の日本の歩みがそこに書かれている。だから、議事録を読め。我々、場末のサラリーマンでも仕事を受け継いだ際、そのテーマについて書かれた議事録などの報告書を読むことから始める。議員の中には、サラリーマン経験のある人間もいよう。それなら、国会議員になっても仕事は同じではないのか。
(文中、基本的に民主党の構成員には敬称略とした)