それ、立法府軽視だから

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首相が靖国に真榊奉納したことに、朝日と毎日が社説で「釣られた」ということを昨日、書きました。で、本日付で産経もある意味では「釣られて」しまいました。本来なら、産経も社説にもしなくていいんですけどね。ただ、中身は面白い事実が書いてありました。
「【主張】首相の靖国奉納 騒ぎ立てる問題ではない」
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070510/shc070510000.htm

今春の靖国神社例大祭には、三権の長である河野洋平衆院議長も真榊を奉納した。

昨日の朝日と毎日の社説には書いてなかった事実です。知らなかったとすれば、報道機関として無能。知っていて書かなかったら、作為的な詐欺行為ですな。
河野センセイが靖国信仰者だったというのが、私にはとりあえず驚きなんですが、まあ、そこは信教の自由ですから、いいと思います。で、首相はダメで衆院議長はいい、というのは、上の社説で産経が書いているように「理解に苦しむ」ところです。
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というのも、首相っていうのは、行政執行権の最高責任者であって、国家の最高責任者じゃないんですよ。三権分立の民主国家では、単独の責任者ってのはない、ということになっている。で、その行政権の執行に対して、法的な根拠を与えるのが立法府。つまり、日本では国会ですよね。国会で、法的根拠と予算を与えられたものだけが、行政の執行内容となります。議院内閣制では、内閣に拒否権がありません。拒否権行使の代わりに、議会の解散権(日本では衆議院)があるだけで、これは選挙結果次第では拒否権行使の結果、行政執行権を失うことになる、諸刃の剣です。司法権は、立法の内容に不備があったり、あるいは行政執行に法的な欠陥があったり、あるいは法に違反する行為に対して、処分を決定する権利です。司法がルールを作ることはできませんから、司法も立法の範囲を超えることはできません。
以上を考えると、衆議院議長内閣総理大臣最高裁判所長官という三権の長の中で、最も大きな権力を持っているのは、衆議院議長ということになりますね。国論が二分するような議論で、議長の1票で決定する、という事態になった場合、その1票が行政執行されるかどうかを決定するわけですからね。
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この問題一つとっても、マスコミ(特に朝日や毎日)がいかに立法を軽視しているかがわかります。つまり、これが国会軽視になり、野党が簡単に審議拒否と称した「戦術」を取れる下地を作っているということなんです。首相は国の代表である、というのは、外交が行政の専任事項になっているからなんです。それだけのことじゃないですか。国の内側のことを考えたら、むしろ国の代表は衆議院議長ですよ(解散のない参議院は違うと私は認識してます)。だって、行政の執行権を定める法律を作るところの長なんですからね。行政権の長を優越しているわけです。
マスコミがこうして日本の国政制度を勘違いしているから、実は「靖国問題」なんかが発生するんですよ。そして、国会軽視でサボタージュが蔓延する。結局、マスコミは社会の公器でもなんでもなくて、社会の破壊者だってことなんでしょうね。
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