原因はある話。意外でもない。

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石川遼選手が日本アマで予選落ちしたとのこと。
うん、正直、そんなもんじゃないかな、と思いますよ。
ツアーに石川クンが勝ったことはすごいし、今後に大きな期待ができることは確かです。あれ以来、本来はゴルフのプロでもあるゴルフ専門誌までが、プロそっちのけで石川クン特集を組んでました。それが悪いとは言わないけど、みんな褒めてばっかり。せめて、後藤脩先生に一言聞いて欲しいなぁ。後藤先生から見たら、彼のスイング、20点くらいしか付けないんじゃないかと思うんですけどね。ま、今じゃ、ワセダの斉藤と、ゴルフの石川クンの悪口を言えない状況にあるわけで。
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以前、私は石川クンのスイングを見て、下からアオッてると指摘しました。それが一番出てるのが、ショートゲームなんです。彼は、アプローチとパターが下手くそ。ツアーで優勝したとき、バンカーから直接放り込んだから、石川クンはショートゲームが上手い、と思ってる人が多いかも知れませんが、あのバンカーからのチップインは、マグレです。強運の持ち主ですけどね。あのバンカーショットは、入らなかったらグリーンオーバーでしょう。パターも彼は中尺を使ってますが、パターやアプローチってのは、上からきちんとクラブを入れることができないとダメなんですね。彼はドライバーの飛距離はすごいし、どっちかと言うと長いクラブは上手い。でも、短いクラブがダメだっていうのは、どういうことかというと、ほとんどのショットは少し噛み気味なんだと思うんですね。言い方を変えると、アイアンショットでの打点が高すぎる。フェースの真ん中くらいに当たってるんじゃないでしょうか。フルショットだと、スイングのスピードも十分なんで、こういう打ち方でも何とか様になる。でも、ショートゲームはスイングスピードが小さいから、ダフり禁物。フルショットと同じ打点で打つことはできないんです。
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アイアンショットでは、フルショットでも打点の高さは、フェースに刻まれているスコアラインの下から2〜3本目でボールを捉えなくちゃダメなんです。この位置で捉えるためには、下からアオる打ち方では無理です。タイガーでも、練習のときはアイアンショットで一切、ターフを取らないそうです。つまり、できるだけフェースの下でボールを拾うような打ち方を徹底している。これをやっておくと、実はフルショットの練習は、そのままショートゲームの練習にもなるということなんですね。
これに関連するんですけれど、石川クンがプロの試合で優勝できて、アマの大会で優勝できないのは、もう一つ理由があります。石川クンが勝った試合は、プロの試合ですから、距離も結構長いし、かつ、グリーンが大きいコースでした。見た感じ、近年流行のベントのワングリーン。これだと、セカンドショット以降もフルショットできるんです。ところが、アマの大会だと、距離が短いし、グリーンも小さい。今回の日本アマなんか、パー74だそうですよ。正直、これは問題ですけどね。まあ、そこはいいとして、そうなると、フルショットではグリーンが狙えないので、そのコントロールショットが必要になってきます。でも、コントロールショットというのは、スイングスピードを落とす、ということですから、そうなると、彼の「やや厚めのインパクト」ではコントロールし切れない。結果として、そういうコントロールショットの回数が増えるほど、彼のスコアは伸びないということになります。
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いや、そういうゴルフは今から覚える必要はないんじゃないか。彼の持ち味は、ピンをデッドにフルショットで攻めるゴルフだろう。そういう人が出てきそうな気がします。でも、タイガーが全米ジュニアから全米アマにかけて、勝ち続けていた頃の映像を、私は見たことがありますが、小さい頃から飛距離自慢だった彼が、全ショット振り回している場面は見たことがない。ドライバーもほとんどのショットで、バックスイングをコントロールしている。ジュニアの頃より、今の方がしっかり振っている印象すらあります。タイガーってジュニアの頃は、すごく細い選手ですからね。振り回して、スイング、身体を壊すことを嫌ったのかも知れません。ジュニア時代でもタイガーのインパクトで頭が右に傾いているのは見たことがない。それだけ、無茶振りしていないってことなんですよ。一方の石川クンは、インパクトで頭が右に傾いている。見て分かるけど、ゴルフ用語でいうマン振りに近いですわな。本人は、これでもセーブしてますって言うんでしょうけどね。
ゴルフってのは、実は距離感のゲームなんですね。横方向のズレは、コーチが何とかできます。コーチに習ったことがない私でも、18HでOBゼロっていうゴルフは出来るし、グリーンを狙うショットで、左右に曲げて外すことは、実はほとんどありません。距離が短い、大きい、ということが原因でグリーンを外すことが多いんです。だけど、私も含めたほとんどのゴルファーは、左右の曲がりをすごく気にして、距離についてはほとんど気にしていない。石川クンは、もちろん将来、トッププロを目指しているんだろうから、それなりに考えているんだろうけど、まだまだ甘いということなんです。
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だから、石川クンにはもっと距離感を磨いて欲しい。しかも、1本のクラブでいろんな距離が打てるようになって欲しいわけです。彼は、350Yを真っ直ぐ飛ばしたい、と言っている。それなら、ドライバーで200Yを真っ直ぐに打って、200Yに置く、という距離感を養うことが必要です。タイガーは確かに飛距離のある選手だけれども、タイガーより飛ぶ選手はたくさんいます。また、タイガーよりもドライバーを正確に打つ、方向性の優れている選手もいます。でも、タイガーより距離感の優れている選手は、他にいない。彼が強い理由は、ここにあります。実際、タイガーは練習ですごくゆっくりしたスイングで、ドライバーで200Yくらいを打つ練習をしている。石川クンが目指す男は、もっと先を見据えた練習をしているんですよ。
タイガーやミケルソンのクラスになると、14本のクラブの飛距離はほとんど意味がない。その距離感、高さへの感覚、スピン量、左右の曲がり。そういうものを考えたら、彼らのキャディバッグには100本以上のクラブが入っていることになる。14本しかクラブを持っていない石川クンとの力量差は明らかでしょう。そして、日本アマで優勝を目指すトップアマの人たちだって、せめて14本を30本くらいにする技量の持ち主なんですよ。まだまだ、石川クンが勉強すべきところは多いんです。
でもね、一番の問題は、それを指摘する人がいるか、ということと、その問題を解決するコーチが彼の近くにいるかどうか、なんですよね。もう、彼の近くの人間では、それをできる人がいないでしょうね。彼自身、今後に向けて、環境を大きく変えなければならない頃に来てるんですけどね。同じことは、宮里藍横峯さくらにも言えますが。
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