一番の内政問題は「役人対策」

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参院選の結果についてです。
自民の大敗は予想できたことですが、ここまでの差になるとはね。しかし、衆院以上に小選挙区制に近い参院一人区(衆院は復活当選があるけど参院はない)だと、このような結果になり得るということですね。
この選挙は、郵政選挙からの流れを検証されることが多かったと思いますが、一つ言えるのは、この参院選小選挙区制の妙が出たということでしょう。以前、郵政選挙の際にも書きましたが、カナダの総選挙では与党が150以上持っていた議席を2に減らす、というとてつもない大敗を喫したことがあるくらいですから、選挙区制度から考えると、この結果はまだマシな方だとも言えるかも知れません。
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では、自民党の大敗の原因は何か。いろいろテレビや新聞報道がなされてますが、私は少し違う視点で見てみたいと思います。
確かに閣僚の不始末だとか、いろいろあると思うんですが、やはりキーワードは「官僚」の問題だと思います。もうちょっと平たく言うと「役人」の問題。
郵政民営化を問うた前回の総選挙ですが、マスコミは全くその真意を報道しませんでした。しかし、国民の方がわかっていました。それは、小泉前首相の基本方針が「役人に無駄な金を渡さない」ということです。小泉氏の5年間の内政に関して言えば、この一言に尽きます。郵政民営化という方針は、官僚が財政投融資のカネをちらつかせて議員と票をコントロールする「官僚支配」の体制を崩すことでした。何故、マスコミがこの真意を報道しなかったかと言うと、マスコミを監督する省庁が総務省だからなんですね。自分たちも、実は官と癒着してる。郵政民営化がマスコミから総スカンを食らった背景は、ここにあります。
安部政権は、発足してから年金問題に苦しみますが、裏を返すと、絶好のチャンスだったはずなんです。もし、小泉氏だったら逆手に取っていたと思います。過去の社保庁の幹部を証人喚問し、実態を徹底的に調査し、処分を下していたら、こういう結果にならなかったと思います。ところが、これが自分の「失策」になると安倍さんは考えて、「証拠のない人にまで支払うのか」という意味の答弁をしてしまいました。この時点で、程度はともあれ参院選の敗北は確定していたようなものでしょう。だいたい、会社からもらう給与明細や源泉徴収票を毎年保管している人が、どれくらいいるんだと。その実態を知らないということで、安部は庶民が分からない、ということを露呈したし、この時点で「小泉は官僚をこき使ったが、安部は官僚を守る人だ」と判断されてしまったのだと思います。
しかも、天下り規制法案に関連した公聴会に、歴代次官を召集しようとしたら、全員が欠席。しかも、出身の省庁からの連絡すらしていなかったということまで明らかになった。これも、安部さんが官僚を全くコントロールできていないことを示してしまった。
こうした対官僚への弱さが、国民の信頼を失った一つの要因だと思います。
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ということは、民主党も全然磐石じゃないんです。民主党比例代表のトップ当選は、なんと自治労出身です。私は、拙日記で何度も自治労のあり方はおかしい、と言ってますが、民主党は今後、自治労との関係を追求されます。官僚、というとどことなくキャリア的な「お偉方」と想像しますが、お偉いさんだけじゃなくて「役人」だって相当ひどい。大阪市では市職員労組の問題が取り上げられてましたが、自治労や連合がそれに対し、何か反省や改善を考慮するようなコメントを出していないと思います。
裏返しで見ると、高級幹部役人は自民党、中級以下の役人は自治労で野党支持、と分けることで結果として、未だに立法府に行政が介入しようとしているとも言えます。
つまり、民主党が今後やるべき「改革」は、自治労と手を切る、ということです。自治労と手を切るのは、本来、連合の役目でしょうが、それを民主党から促す。その結果、自治労が離れて、自民党に行ってしまっても、それでいい。自民は役人の言うなり政党だ、と言えるからです。組織が完全に弱体化している自民は、とにかく計算できる票田が欲しいから、自治労を切り離したら、すぐに飛び付くと思います。それは、民間労組から見れば、思う壺です。
民主党の課題は、脱・労組なのではなくて、脱・自治労です。これが、今後の民主党の躍進や政界再編における主導権確保に影響すると思います。
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以上が、とりあえず、今回の参院選における感想です。
あと、自民支持者が今回はだいぶ、自民を見限ったという分析が出てますけど、自民党支持のマスコミがこんなことを書いてたら、バカにするんじゃねぇ、と思うんじゃないでしょうかね。産経新聞の昨日の社説です。
「【主張】混乱と停滞に戻すのか 将来見据えた投票行動を」
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070729/shc070729000.htm
まあ、全文読んで下さい。朝日新聞の安部叩きは、週刊誌にも特集されているくらいでひどかったけど、選挙に入ってからの産経新聞の安部ヨイショも、ひどかったですよ。しかも、選挙期間には「やばいぞ日本」とかいう企画までやってましたしね。ここまで、読者を見下した記事がよく書けたものだ、と思いましたけどね。案外、自民大敗の原因は、産経の露骨なヨイショにあったりして。
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