安倍首相、辞任

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思えば、昨年の今頃ですね。丸一年ですか。当時は、安倍・麻生・谷垣の三氏が自民党総裁を争っていましたね。その少し前は福田氏も立候補する、しない、で話がありました。その頃は、私は安倍・麻生の両氏に期待していたわけですが、まさかね、こういうことになるとは。
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記者会見の要旨を見てみますと、どうもテロ対策特措法民主党・小沢代表に会談を申し入れ、それを断られたことが大きな理由のように発言していますね。私は、この裏を読みたいと思います。
数日前、シドニーでテロ特措法の成立に職を賭す、という発言を安倍氏はしていました。そのニュースを受け、私は「安倍氏自民党に対し、裏切るなよ」というメッセージを送ったのだ、と書きました。つまり、衆院差戻しで2/3以上の与党賛成で可決する、というシナリオを描いていたと思うのです。
つまり、小沢代表との会談が行われようが行われまいが、実はどっちでもよいわけで、安倍氏は与党内部に対して、オレで総選挙を戦えるのか、と脅したわけなんですよ。
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そこに来て、この辞任でしょ。つまり、衆院差戻しでも2/3が取れないということが確定したということだと思います。実は、自民党は単独では2/3に届きません。公明党と合わせて2/3なんですね。私が想像するに、最終的に自民党に引導を渡したのは、公明党ではないかと思うのですよ。
テロ対策特措法の改正において、公明党衆院差戻しの場合は、直近の民意を尊重して、反対する、ということが伝えられたのではないかと想像します。
そもそも、小沢代表との会談は断られるか、もしくは決裂するかどちらかしかありません。もし、本気で安倍氏が小沢氏に「至誠天に通ず」みたいな気持ちで会談を申し入れていたとしたら、私はその方が安倍氏の無能っぷりを曝け出しているように思えるし、そこまで甘い人だとも思えません。だから、「職を賭す」発言は、公明党の離脱さえなければ、結構、上手い具合に党内掌握できる可能性があったんです。
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しかし、安倍氏は何かと手回しが足りない人です。この辺り、表面上だけ小泉氏の真似をしている、と私が書いた通りで、小泉氏は相手を説得することは絶対しませんが、相手の弱点については徹底的に調べ上げる人だと思うのですよ。司馬遼太郎さんの作品に「燃えよ剣」という新撰組土方歳三が主役の小説がありますが、この土方歳三、喧嘩上手なんですよ。ただ、その場の喧嘩に強いだけじゃなく、喧嘩の準備がとにかく上手いし、周到なんです。小泉氏が「燃えよ剣」を読んでいたかどうかは、知り合いじゃないのでわかりませんが、喧嘩師という点では、土方と小泉氏はよく似ていると思います。
その点、安倍氏は喧嘩が上手ではない。このテロ特措法において、本当に協力を仰ぐべき相手を間違えたんでしょう。この場合は、民主党じゃなくて、公明党ですよ。衆院で2/3を共に維持する友党なのですから、まず身内を説得するべきだったんです。ここ数週間のニュースを見ても、安倍氏公明党の幹部とこの問題について会談したとは、報道されてませんよね。公明党との結束が固いことを見せた上で、敵である民主党にボールを投げるべきだったんです。もう少し裏読みしたら、この問題で公明党は全く無視されたことで、臍を曲げたという可能性もあると思います。
また、公明党との連絡を取らなかったことで、自民党の執行部やお歴々から押し込めを喰らったということかも知れません。すでに選挙では公明党の後押しがないと勝てない政党に成り下がっている自民党ですし、正直なところ、与謝野官房長官町村外相なんかは、選挙には実はあまり強くない。案外、押し込めの首謀者は、すぐ近くにいるのかも知れません。
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以上は、私の勘繰りですので、事実はどうなのかよくわかりません。少なくとも、安倍氏という人は、この一件を見る限り、私としても支えられない人です。もし、健康上の理由なら、それを明確に言うべきです。今のところ、そういう説明をしていないのだから、受け手である我々は、やはりモノを投げ出す人だ、としか言いようがない。この調子では、主権の及ばない相手との交渉事である外交だって上手く行くわけがないですしね。
テロ対策特措法は、成立するしないに関わらず、国会での重要な議論のテーマだったわけです。成立させることが重要なのではなくて、議論していくことも大事でしょ。今、ここで政権を放り投げて、しかも総選挙になったら、そういう外交方針での選挙じゃなくて、安倍批判の選挙になっちゃうでしょ。それじゃ意味がないでしょうに。
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とまあ、ここまでが私の舞台の裏側のカラクリ読みです。で、恐らく朝日新聞を代表とする方々は大喜びだろうし、これで「福田首相」を切望する動きも出そうな気がするんですが、そういう人たちには、こういう見方もあるんだよってことをご紹介しておきます。
安倍晋三 vs. 福田康夫 vs. 中国」(「週刊アカシックレコード」より)
http://www.akashic-record.com/y2007/acvsf.html
実は、福田氏は「親シナ派」ではないってことみたいですね。
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