くっくりさんの起こしから

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「ぼやきくっくり」という大変勉強になるブログがあります。その中で、Willの花田紀凱編集長と、勝谷誠彦氏の激論のテキスト起こしがあります。
「「ムーブ!」花田編集長『そんなに安倍が悪いのか』」
http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid376.html#sequel
まあ、花田さんも勝谷さんも似たり寄ったりというか、あまり議論が噛み合ってないような気がするんですけどね。面白いことは面白い。
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その中で、一つだけ気になった部分があったので、引用します。

勝谷誠彦
「それとね花田さん、欧米では確かに年金や何かは政争の具にしないけれども、システムとしては政争の道具にしないということなんです。違うんですよ、スキャンダルなんですよ。あれはたまたま社保庁っていう所だけれども、役人どもがこんなポッポ(着服)をずっとしてたっていうスキャンダルだし、政治資金だってスキャンダルなんですよ」

花田紀凱
「でも、それは社保庁の連中がポッポに入れてたのは、別に安倍さんの責任でもないし」

勝谷誠彦
「違う!」

花田紀凱
「はっきり言って、それはむしろ自治労の方の責任ですよ」

勝谷誠彦
「違いますよ!それはね、組合が悪いって言うけど、組合が悪いって言っても、それを認めてきた使用者がいるわけで、使用者と○○○○○当然あるわけで(聞きとれず)、それは戦後の自民党じゃないですか」

花田紀凱
「それはもちろん。でも現場でやってるのは組合なんだから。組合の連中がポッポに入れてたわけじゃない。それを周りの連中は、じゃあどうしてたの。見て見ぬふりをしてたわけですか?

勝谷誠彦
「そうでしょ。見て見ぬふりしてたわけでしょ」

花田紀凱
周りに同僚はたくさんいるわけでしょ。こいつら何やってた?

勝谷誠彦
「それを言うんだったら、上役は何してたんですか」

花田紀凱
「もちろん上役は責任はあります。責任とらなきゃいけません。だけど現場で全部いちいちチェックしてるわけではないので、それはむしろその……」

この議論で言えば、勝谷さん、明らかに民主党応援団になり切っています。勝谷さんと小沢一郎氏がどういう関係にあるかは、まあご存知の方はご存知でしょうけど、この議論では明らかに勝谷さんは、知っていて誤解しているか、モノを知らないかどっちかですね。
上の引用での太字は、私が太字にした部分で、くっくりさんの太字部分とは違ってますので、まずはそこをご了解下さい。
その上で、まず、勝谷さんは社保庁の役人さんの「使用者」を、社保庁の管理職だと思っておられるようです。これ、まず勘違いです。社会保険庁の職員は、れっきとした公務員ですから、その使用者は「国民」です。社会保険庁の管理職と現場職員の間に、労使関係は成り立ちません。だから、そもそも自治労という存在そのものが間違っています。
さらに、「上役は何してた」発言に関して言えば、労使関係を結ぶということは、お互いを信頼するという前提が必要です。そもそもが憲法違反の自治労ですが、自治労の存在を認めるということは、自治労の面々の仕事は信頼しますよ、ということでもあります。私の会社にも労働組合はありますが、会社側は労働組合側に、今流にいうと「コンプライアンス」、まあ法令順守ですわな、それをお願いする。労組も、それは当然だから受け入れる。会社側から、「お前ら、法令守ってないんじゃないか?」と猜疑の目で見られるような職場にはしたくないし、労組はそういうことに責任を持つから、会社は安心しろ、というのが、民間の会社における労組では、ほぼ常識といっていいと思います。
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ですから、自治労は法令順守していないんだから、これは上役の責任もあるにしても、そもそもが労組としてあるまじき行為をしているということなんです。ここで開き直って、「上役に責任はないのか!」なんて言える立場にありません。もし、民間の会社で、組合員がこういうことをやっていたら、即座にその社員はクビになるし、その後の労働環境において、監視・猜疑の目で見られることを、労組としては受け入れざるを得ない。だから、民間の労組は、現場の代表として、そういうことを絶対にしないように要求する。私も、属する会社の組合員(管理職じゃないから)ですが、詐欺・着服などの行為をはじめとする法令遵守は、会社よりも労組からしつこく言われるんですよ。
だから、この一件に関して言えば、自治労側が責任の99%があります。そもそもね、着服したことと、隠蔽したり、不問にしたりしたこととは、別件なんです。勝谷さんは、恐らくですよ、あれだけインテリで鳴らしてる人ですから、意図的に混同してるんだと思います。
花田さんも、自治労は何やってたの?だけじゃなくて、公務員の労組なんて本質的にあり得ない、公務員の管理職と現場との間に労使関係はない、と言うべきでしたね。
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しかし、この問答でわかるのは、小沢一郎氏が党利党略をもって政治に臨んでいるということは、周知のこととして(これはこれでアリなんでしょうけど)、そのタイコモチをする人までが、党利党略を語ってどうするんだよってこと。タイコモチはタイコモチよろしく、親分の戦略にロジックとか美談を付けなくちゃ。そういう意味では、花田さんの方がタイコモチとしては優秀ですな。まあ、花田さんの親分は、とりあえず表舞台から降りてますけどね。
あと、一番の点は、こういう特集やっておきながら、自治労の問題について、その本質に迫る報道は絶対にしないってこと。去年は、大阪市の労組のヤミ専従問題が出てたような気がしますが、その報道でも「市職員の労組って憲法違反だろうが」という話は一切出てませんでしたよね。
じゃ、公務員の待遇とかは改善されない。人権侵害じゃないか、という人がいると思いますけど、そんなの簡単。選挙ですよ、選挙。公務員はこんな悪い待遇で働いている。これじゃ市民の皆さんにまともなサービスが提供できない。だから、もっと高待遇にしてくれ、と主張して、それを実現してくれる候補を立てて、立法府に送り込めばいいんですよ。その手段を持ちながら、さらに労組まで持って、立法府の与り知らぬところで、勝手に仕事の内容、待遇を決めているなんて、おかしいんですよ。
ジャーナリズムとかマスコミも、権力の監視が仕事、と自称するなら、そういう我々が一番肌で接する権力にも取り組んで欲しいところですな。
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