手柄が立てられないからね

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「航海長聴取「海保が了承」、虚偽の疑い…防衛次官」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080227-OYT1T00639.htm

海上自衛隊イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、防衛省増田好平次官は27日夜、同省内で記者会見し、あたごの航海長(交代前の当直士官)をヘリコプターで同省に運び事情聴取した経緯に関し、海上保安庁に事前に了承を取ったという同省の報告に虚偽の疑いがあることを明らかにした。

さて、最近、私はすっかりテレビのニュースを見なくなりました。それどころか、平日はほとんどテレビを見ない。帰宅して、飯食って、風呂入って、カミサンと話をする。特に平日、育児に関われない身としては、カミサンの話を聞くのがとにかく大事なんです。横道に逸れましたが、とりあえずテレビを見ないし、新聞も斜め読み程度なので、マスコミがこの問題をどう扱っているのかは、実は知りません。まあ、恐らく「防衛省の腐敗体質だ」というような論調で、ほぼ統一されているんだと思います。
まあ、それは事実。実際に虚偽だったにしろ、そもそも国民の安全を守るべき軍、すなわち自衛隊が哨戒不全による衝突事故をすること自体、たるんでいると叱責されても仕方ない。ただ、こういうときに防衛省ならずとも、何かと役人さんという商売は、最初に隠そうとしますわね。それはなぜなんだろう、ということを考えた方がいいと思います。
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で、まずは話を防衛省に限定してみましょう。
自衛隊だとか防衛省だとか言ってますが、要するに、普通に考えりゃ、軍隊ってことですよね。軍の現場、つまり制服組とか言われる面々は、士官学校である防衛大学校を出て、士官になるわけですね。
軍隊ってのは、そもそも軍事力の行使が一種のお仕事です。一番イメージしやすいのは、戦争ですが、それだけじゃなくて、平和維持活動だとか、あるいは重度な災害が起きた場合などに布かれる非常事態宣言下や戒厳令下での統治行為も軍のお仕事になります。ところが、自衛隊っていう組織は、そもそも憲法上、軍隊としては認められてません。自衛力なんだそうで、そういう話から、つい最近までは平和維持活動にすら出て行けなかったし、阪神大震災のときはあの無能な左派政党の党首が首相だったために、国内の復興活動にも即時には参加できなかった。さらにいえば、日本国憲法には非常事態宣言や戒厳令の規定がありませんから、そもそも本来、軍事力が必要な場面は、法制上、想定されていないわけです。
これ、要するに、軍事力を担っている自衛隊としては、活躍の場がないってことなんですね。個人に置き換えたら、昇進する場面がないってこと。つまり、防衛省内部、特に現場の人の評価は、減点主義になっているんですよ。問題や不祥事を起こさないことが満点で、何かあれば必ず減点されていく。減点の少ない人が、上位階層に残る、というのが、暗黙のうちに出来上がっているんじゃないでしょうかね。
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だからといって、即戦争しましょうって言ってるんじゃない。明治陸軍の大将で、日露戦争でも軍団司令官として活躍した、黒木将軍は「平時のときにじっくり何もしないでいることこそ、軍隊で最も必要なことだ」という意味のことを言っている。武を司る人間として、そういう気持ちは常に持っておかなくちゃならんとは思います。
だけど、国際的に必要とされていること、国内においても軍事力が必要とされる場合などには、その力を発揮するような仕組を作ることも、防衛省のモラル向上に繋がるのではないかと思います。
恐らく、これは防衛省に限らず、役人さんにすべて当てはまることだと思います。役人さんでなければできないことを、役人さんにやってもらう。そういう仕組を作ることも、この手の官僚不祥事減らす一助になるのではないかと、私は考えます。
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